東京カランコロン @ Zepp DiverCity

東京カランコロン @ Zepp DiverCity
≪ビートルズになりたいわけじゃない 僕はそんなに天才じゃない ピストルズになりたいわけじゃない 僕はそんなに不良なんかでもない 大した事は唄えなくても、誰かにとって、君にとって、エンターテイナーであれたらいいな≫という“誰かのエンターテイナー”の歌い出し。2ndアルバム『5人のエンターテイナー』のリリースに伴い全国10か所をまわってきた「ワンマ んツアー2014」のファイナルとして行われた今日のライヴを徹頭徹尾貫いていたのは、5人によるまさにその言葉通りの精神であり、覚悟だった。

東京カランコロン @ Zepp DiverCity
登場SEとしてKANの“愛は勝つ”が鳴るとすかさず起こった手拍子に迎えられ、メンバーが登場すると、それぞれがステージにカラーボールを投げ込んでいく。その意味を考えるより先に鳴らされたのは“いっせーの、せ!”。このデビュー作の1曲目にも置かれていた生粋のオープニング・ナンバーに、フロアはいきなり沸点に達する。サビでハンドマイクとなりそんなフロアをさらに煽りまくるいちろー(vo/gt)の姿からは、今日のライヴへの意気込みが伝わってくる。シームレスに続いた次の“少女ジャンプ”でも、オーディエンスはイントロからハンドクラップしながら跳ねまわる盛り上がり。凄い熱気である。そのようにフロアを導くのは、もちろんバンドの演奏である。この曲ではサビの爆発力と一体感が抜群に良かった。特筆したいのが、佐藤全部(ba)とかみむー氏(dr)のリズム隊だ。ツインヴォーカル&ツインギターによる上モノの華やかさももちろんこのバンドの魅力だが、トリッキーなフレーズや展開を繰り返し、その上美味しいフィルや遊びもふんだんに盛り込みつつ、音圧やBPMのコントロールまで完璧にこなす2人のリズム・マスターぶりには敬服せざるを得ない。

3曲目“マッハソング”でも、ほとんどグラインド・コアのようなBPMのオケ(音源よりさらに速い!)と、歌謡的な歌メロとのミクスチャーがフロアに一層の燃料を投下する。息つく間もないここまでの流れを変えたのは、バスドラの連打でじっくりと始まった4曲目の“フォークダンスが踊れない”。いちろーの身振り手振りを交えたフェイクに、踊るよりもつい目が釘付けにさせられる。このツアーをまわる間に、『5人のエンターテイナー』の楽曲が生演奏の場に最も適する形に磨き上げられてきたことを明白にするパフォーマンスだ。

東京カランコロン @ Zepp DiverCity
最初のMCで、オーディエンス全員が気になっていたであろう点に、ついにいちろーが突っ込む。「何をどの方向に行こうとしているのか全然…佐藤さん、今日のテーマは何ですか?」 銀ギラのレインコート状(?)の、奇抜というかもはや奇妙な佐藤全部の衣装。何なんだ、その服。いや、そもそも、それ服? 対する佐藤の回答は、「今日はチャレンジということで…ロックンローラーを意識しました。センキュー!」というもの。そんなやり取りからの流れで続いたのは、“言え言え言え”。60年代のロックンロール調のリフをメインに据えながら、あくまで自分達らしくポップに仕上げ、しかも負けないくらいの勢いを創出する。ポップオタクとしての大衆音楽の歴史への愛と、それを土台にした自身の表現への拘りが垣間見られた瞬間だった。

ライヴ中盤では、普段あまりやらない曲をやることをテーマにしたワンマン恒例の「どきどきゾーン」に突入。ゾーン1曲目はこのメンバーになる前のかなり古い曲だという“ランドマークで行き止まり”。カンタベリー・ロックを想起させられるシュールな曲展開が耳に残る。続いてはthe pillowsのトリビュート盤に収録されていた“ノンフィクション”。曲調の落差がえらいことになっている。しかし、蒼く直線的な原曲に対し、キーボードをフィーチャーした極彩色のアレンジでガラリと雰囲気を変えたオケと素直に山中さわおの歌い回しに寄せたいちろーのヴォーカルとのこんがらがったコントラストが愛らしい、秀逸なカヴァーであった。この曲を終えると、一旦メンバー全員がステージからはけ、黒いサングラスとキャップやニット帽を被り再登場する。いちろー「俺達のヒップホップ魂、見てもらっていいですかー!おいかわさん、準備はいいですか?」。おいたん(gt)「いいYO」という掛け合いから始まったのはやはり、『5人のエンターテイナー』の最後に収められていた“ボーナストラック”のラップだ。ヨレヨレのフロウながら、≪4人のおっさん!1人、おねえさん!≫という秀逸なコーラスに合わせフロア中の右手が上下する様はヒップホップのステージのように見えないこともないかもしれない。とにかく、楽しませれば何でもアリという5人のスタンスが実際にオーディエンスを存分に楽しませている光景は、言うまでもなく幸福なものである。

東京カランコロン @ Zepp DiverCity
「どきどきゾーン」を締めくくったのは、5月14日のリリースが決まっているニュー・シングルからの2曲、“恋のマシンガン”と“ヒナゲシ”。せんせい(vo/key)から「テレビの中の好きなミュージシャンでもタレントでも俳優でも、誰か大好きな人への好きという気持ちを好き好き好きとマシンガンのように撃ちまくる曲」と解説があった前者は、間奏での恐らくはマシンガンをモチーフにしたスネアまわしが絶品な、アッパーなダンス・ロック。今の東京カランコロンとしての直球の剛速球という印象。1番をせんせい、2番をいちろーが歌う後者はミドル・チューンで、彼らには少し珍しくも思える湿った歌メロが主軸となった歌モノ。この2曲にもう1曲「爆弾のような曲が入る」(せんせい談)というシングル、今から仕上がりが楽しみである。

ゾーンが終わり、おいたんのほとんどエクスペリメンタル・ロックのような凄まじいソロが美しいラヴ・ソングに強烈なスパイスを加える“指でキスしよう”を経て鳴らされたのは、初期の名曲“ラブ・ミー・テンダー”だ。リヴァーヴの霧が張られる中で、充分なタメを作りリリックに込められた感情を噛みしめるような歌唱が丁寧に進んでいく。ツインヴォーカルが絡み合いながら、少しずつ導かれる絶頂。今すぐ再音源化してくれと懇願したくなるような出色の出来である。しかし、流石のライヴ巧者としてバンドはこの曲の感動をさらに更新する怒涛のハイライトをセットの締めに用意していた。“走れ、牧場を”~“泣き虫ファイター”という人気曲を畳みかけギリギリまで高めたフロアの熱を、相当の声量とファルセットを自在に操る器用さを兼ね備えながら変態的なアクションを厭わないいちろーのフロントマンとしての個性が遺憾なく発揮されたハイパー・エレクトリック・ファンク“true! true! true!”。純血のロックンロールであり、である以上当然に最高な“16のbeat”で限界突破させるという流れである。フロアの興奮は本当に驚異的なものだった。

東京カランコロン @ Zepp DiverCity
アンコールでは初めに、MCでライヴの冒頭に行ったカラーボールの投げ込みが、ボールを受け取った人が終演後の楽屋に招待されるという企画であったことが明かされる(公式HPでは事前に抽選方法を除き告知)。このタイミングでそれを伝える悪戯心も含め、人の喜びを喜ぶ彼らの姿勢が映されたあたたかい良い企画だったと思う。そして、いちろーの「急に人の目に触れる機会が増え、何のために音楽をやっているのか分からなくなりかけた時期に出来て、悩みに答えを出してくれた曲」という紹介から“誰かのエンターテイナー”が披露される。音源では曲が進むにつれ楽器の音が重なっていったが、今日はフル・アカペラで演奏。それでもウェル・メイドな出来となっているのが素晴らしい。アンコール2曲目はまたまたサプライズ。“マリメッコとにらめっこ”と“マドモアゼルと呼んでくれ”の2曲から、誰が挙げたか分からないように目をつぶらせた上オーディエンスの挙手で採決するというのだ。しかし、これがほぼ同数という結果となったため、結局いちろーとせんせいがジャンケンをし、“マリメッコとにらめっこ”に決定。フロアからは「どっちも聴きたい!」という声が沢山飛び出していたが、今日やらなかった“マドモアゼルと呼んでくれ”も「次の機会に必ずやる」とのこと。そして、約2時間半におよぶライヴは、「隠し美声」といじられていたおいたんがマイクをとった“J-POPって素敵ね”でフィニッシュ。自分達の本音に気付き、それを出来る限り混じり気なしに音に落とし込んだ作品が『5人のエンターテイナー』であったとすれば、今日のライヴはその本音を直接伝えたい相手に伝える場として正しく機能していた。そして、その本音を共有したからこそ、これからの東京カランコロンとファンの関係性は、ちょっとやそっとでは揺るがない強固なものとなったはず。終演後にまでフロアに残った熱気と笑顔がそれを物語っていた。(長瀬昇)


セットリスト
いっせーの、せ!
少女ジャンプ
マッハソング
フォークダンスが踊れない
言え言え言え
F.L.O
てのひら
キャラメル
~どきどきゾーン~
ランドマークで行き止まり
ノンフィクション
ボーナストラックのラップ
恋のマシンガン
ヒナゲシ
指でキスしよう
ラブ・ミー・テンダー
×ゲーム
走れ、牧場を
泣き虫ファイター
true! true! true!
16のbeat

<アンコール>
EN1. 誰かのエンターテイナー
EN2. マリメッコとにらめっこ
EN3. J-POPって素敵ね

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