10-FEET @ Zepp DiverCity

 「お前らライブハウス好きか? コケたやつおったら起こしてやれよ! 今日はケガ人なし! 落とし物あったら届ける! 痴漢もなし! 10-FEETのライブ中、この会場にあるおっぱいは全部10-FEETのもんや! 勝手に触るな!」ーー春だというのに全員汗だくの熱気に満ちたZepp DiverCityで、力の限りに叫び上げるTAKUMAに、ソールドアウト満場のフロアから爆笑と大歓声が沸き上がる! 3月9日・京都KBSホール公演からスタートしたばかりの10-FEETの全国ツアー=『10-FEET "ONE-MAN" TOUR 2014』の3本目、東京・Zepp DiverCity公演。「多数ゲスト・アーティストとの奇跡のコラボ越しに10-FEETのルーツと他アーティストとの信頼関係が浮かび上がったステージ」という意味でも、「TAKUMAはじめ10-FEETの3人の人懐っこさとバイタリティが楽曲とともに渦巻いていた熱演」という意味でも、「ロック・バンドの/ライブハウスの『楽しさ』だけでなく、その『楽しさ』を自分の手で作ることの大切さを、オーディエンスすべての頭のてっぺんから足の先まで注ぎ込む晴れやかで真摯なアクト」という意味でも最高のライブ……つまり、「10-FEETが愛される理由」が、トータル3時間に及ぶスペシャルな一夜の中にぎっちり凝縮されていた、ということだ。[※以下、演奏曲目についても触れつつレポートしています。ツアーに参加される方は終了後にご覧ください]

 “SKANKIN' CHOKE BANGER”“JUNGLES”など最新アルバム『thread』を軸に据えながらも、“RIVER”“4REST”“VIBES BY VIBES”などキラー・ナンバーのみならず“LOODY”など懐かしの名曲群も織り込んで、観客の情熱を瞬間沸騰させ、割れんばかりのシンガロングと会場激震のジャンプを巻き起こしていく。そんな中、「俺ら、この3人でバンドを17年やってんねんけど……17年より前は4人とかでやってて、俺マイクだけで歌ってて。ライブ1週間前にギターのシンちゃんが連絡取れんようになって、こいつらが俺に『ギター弾きながら歌え!』って言い出して(笑)」とTAKUMAが語る。「最初はミクスチャーやりたかってん。ラップ要素とレゲエ要素を入れてやりたかったけど、ギター弾きながらラップなんかできるかい!みたいなって、最初は大好きなメロコアばっかりやっとって。結成して4年ぐらいして、上京して『もうラップやりたい!』『こんなラップがしたい』って言って、俺の部屋でザ・キング・オブ・ステージ、RHYMESTERを聴いて、ラップを覚えまくって……」。さらに「憧れの人、カッコいい先輩と、いつか一緒にコラボとかやりたいな! 先輩と一緒に来てる人、どれぐらいおる? 俺らもな、憧れの大先輩と……」というTAKUMAの言葉に、フロアが期待と歓喜でざわつき始める。そこへ「紹介します! RHYMESTERのみなさんです!」というコールに導かれて宇多丸/MUMMY-D/DJ JINが登場! “focus”の歌詞を《京都から東京へとつながるパッション》とアレンジしてフロアをでっかく揺さぶり、会場丸ごと熱狂の彼方へと誘っていく。

 中盤には、「10-FEETの音楽には、パンクとロックとメロコアとラップともうひとつ、レゲエ要素を入れたいと思って。俺たちがめちゃめちゃ影響を受けたレゲエの友達を紹介します!」というTAKUMAの絶叫とともにFIRE BALLがオン・ステージ、“STONE COLD BREAK”炸裂! 「別に世の中、醒めてたって生きていける。でも、熱くなったほうがより気持ちいいということを知ってるんですよ、10-FEETのお客さんは!」というSUPER CRISSのメッセージにフロアが沸き返ったところで、「ミスターTAKUMA! あのね、俺らがなんでここに来て、なんで“STONE COLD BREAK”っていう曲を一緒に歌ってるのか、説明してあげて!」(CRISS) 「さっき、RHYMESTERにやってもらった時も、なんでやったのか?が伝わってない(笑)」(NAOKI)……そう、すでにニュースとしてもされている通り、6月18日にコラボレーション・アルバム第2弾『6-feat 2』のリリースが決定、RHYMESTER
もFIRE BALLもそのコラボ・アーティストとして音源に参加しているのである。「すごいことなってるやろ、今日。下手したらお前の親とか出てくるかもしれん(笑)」とNAOKIに話しかけるTAKUMA。そして、「あの……まだやっていい?」という言葉に沸き上がる大歓声の中、ステージにはマイクが4本運び込まれる。「俺らもコラボした先輩で……カッコええぞ! 向こうがガンダムやったら俺らSDガンダムみたいに見えるからな!」というコールとともに登場したのはもちろん、東京スカパラダイスオーケストラからスカパラ・ホーンズ=GAMO/NARGO/北原雅彦/谷中敦! 4人が放つ魂の号砲のような晴れやかなホーン・サウンドとともに“hammer ska”が響き渡り、至上の狂騒天国はさらに熱と輝度を増していく。さらに、「もうひとり、いやもう1匹呼んでいい?」というTAKUMAの呼びかけとともに現れたMAN WITH A MISSION・Tokyo Tanakaとともに“super stomper”をドロップ! エネルギーのカタマリのようなアンサンブルと絶唱に、オーディエンスも渾身のジャンプとシンガロングで応えていく。

 そんなクライマックスだらけのライブの中で、「親友でも恋人でもケンカになったりするし、時には家族でも仲悪くなったりするし。テレパシーなんかないから、長い付き合いに甘えずに、恥ずかしさを振り絞って、時には想いを伝えなくちゃね。価値観や性格や考え方が違うから、ケンカや戦争も起こるけど、逆に尊敬や恋やアイデアも生まれると思うねんな……まあ、腐らず行こうや!」とTAKUMAはオーディエンスひとりひとりに呼びかけるように、ライブの随所でひと言ひと言、じっくりと想いを語っていたのが印象的だった。作戦も工夫もペース配分も関係なく、ただ純粋に演奏を楽しんでいた初めてのライブの時のこと。人の優しさにも、感動にも、映画にも音楽にも美味しいものにも、どんどん慣れていってしまうこと……その言葉はもしかしたら、観客よりもまず自分自身に向いていたように見えた。そして、「今日は、ペース配分も全部忘れて! 初めてのあの夜を越えたい! アホになるまでかっ飛ばすから、付いてきてくれ!」と喉も裂けよとばかりに叫んだ後、「今日は絶対ぶっ飛んでやる!」と流れ込んだ“back to the sunset”が、ひときわ熱く胸に焼きつくような切実さをもって、Zeppの隅々にまで広がっていった。

 その後も“ライオン”でTAKUMAとtricot・中嶋イッキュウが絶妙のデュエットを披露したり、「今日はスケジュールが合わへんでロットン来られへんけど……」とROTTENGRAFFTYがコラボ参加していることを告げた“その向こうで”の途中でTAKUMAの「『来られへん』って言ってたけど、到着したみたいです!」のコールとともにNOBUYA&N∀OKIが登場して「ロッ10グラフィート」編成で“その向こうへ”を爆演したり……といった名場面越しに「京都発」バンドとしてのアイデンティティも刻みつけてみせた10-FEET。「少なくとも俺は、先輩の曲とか、大好きな友達の曲とか、1曲1曲に人生を変えられてきたから。1曲やるだけでいじめがなくなったり、震災復興全部できたり、いろんな問題を解決できたりできひんけども、ひとりひとりのパワーにはつながると思ってます。そういう可能性が、ライブのひとつひとつ、一瞬一瞬にあるって信じてて。しかも楽しい! そういうライブハウスとライブが大好きなんで
。楽しい場所はより楽しい場所にしていこう。みんなでよくしていこうね、これからも!」……「楽しむ」ことの難しさと、だからこそ「今」の楽しさを全力で作り上げていこう、というTAKUMAの想いのひとつひとつが、むせ返るような熱気とともにフロアを包み込んで、惜しみない拍手を呼び起こしていく。「初めての嬉しさとか感動とかをすぐ忘れていって、なんでやろな?っていう気持ち」を曲に注ぎ込んだ“蜃気楼”。別れ/悲しみ/後悔/悔しさを少しでも「その先」の勇気や優しさに変えられたら、という願いを託した“シガードッグ”、さらに《思い出が美しさを増すのは僕の心が汚れてくからさ》というフレーズがTAKUMAのブルースハープとともに響く“淋しさに火をくべ”……そんなシリアスな場面が、ステージとフロアの心のギアをより強靭に噛み合わせたところで、“1sec.”“2%”“goes on”連射! Zepp一丸となって怒濤の絶頂へと昇り詰めてみせた。

 アンコールで披露したスカパラとのコラボ曲“閃光”では、スカパラ・ホーンズに加えて加藤隆志が登場してTAKUMAにスカパラと揃いのジャケットを渡し、さらに曲の途中で姿を見せた茂木欣一がKOUICHIにジャケットを渡しつつドラムを担当。続けて沖祐市/川上つよしまで舞台に現れ、まさかの11人編成に。「俺は? 俺は?」と言うNAOKIに、谷中が自分の上着を脱いで渡す。「俺そっちがいい!」とTAKUMA。爆発的なまでにアグレッシブな“閃光”が、最高の一夜をさらに目映く彩っていく。 再びNOBUYA&N∀OKIとともに「ロッ10グラフィート」編成で“AND HUG”をぶっ放してフロアの温度をがんがん上げた後、最後は“CHERRY BLOSSOM”で大団円! 今回のツアーとともに当初予定されていた春のニューシングル発売こそ中止になったものの、コラボレーション・アルバム『6-feat 2』のみならずカバー・アルバム『Re:6-feat』(詳細はこちらを→http://ro69.jp/news/detail/99488)も同時リリースする10-FEET。人間の弱さと儚さ、それゆえの掛け替えのない愛しさ。そこに全身全霊傾けて向き合っていく、バンドとして/表現者としての決意ーーそんな10-FEETの核心が全開になった、圧巻のロック・アクトだった。ツアー次回公演は4月5日:富山・クロスランド小矢部にて!(高橋智樹)
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