となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO

となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - the band apartthe band apart
関西発の人気ライブイベント「となりのバンドマンツアー」。2回目の開催となる今年は、3月25日の岡山からスタートし、大阪(3月26日)を経て、この日が東京・渋谷でのファイナル。テレビ番組の名物企画「突撃!隣の晩ごはん」にあやかり、隣にいるカッコいいバンドを、数珠つなぎにどんどん紹介していくという趣旨から、このツアータイトルがつけられたという。サウンドやスタイルは異なれど、ライブに鉄壁の実力を持つバンド、ステージでこそ、持ち味や楽しい個性が存分に伝わる3バンドが登場。いやぁしかし、この日はどのバンドも本当にキャラが立ちまくりで、熱い演奏に心をガッツリ掴まれ、MCやパフォーマンスに爆笑させられ、気持ちのいいビートに体の動きが止まらずに、最後は心も体も汗だくに。濃厚なロックを3時間、どっぷり堪能したライブだった。


となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - グッドモーニングアメリカグッドモーニングアメリカ
トップバッターは最新ツアーが全公演ソールドアウトし、快進撃中のグッドモーニングアメリカ(グドモ)。ふと見るとフロア後方に、人気のゆるキャラ“ふなっしー”に似た着ぐるみが、満員の観客のあいだをヨロヨロ、お客さんに助けられながら歩いてくる。ファンにはお馴染み、たなしん(B&Cho)恒例のコスプレでの登場だ。「“たなっしー”も今日で卒業しますなっしー。最後まで楽しんでなっしー」と、海援隊の“贈る言葉”を歌いながらステージへ。爆笑ムードで一気に和んだ空気の中、着ぐるみがなかなか脱げず、しばらくジタバタやったあと、1曲目“アブラカタブラ”で演奏がスタートした。最新シングルに収録の、アップテンポなギターリフと裏打ちビートに、フロア全体はすぐ波打つように、ジャンプ、ジャンプで呼応する。金廣真悟(Vo&G)の圧倒的なボーカルが歌詞とメロディをストレートに客席に届け、間髪をおかず“空ばかり見ていた”“ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ”とアッパーな曲を連打。新旧おり交ぜ「今日は最後まで突っ走る」とばかりの意志表示が熱い。永遠の青春ソング“言葉にならない”では、爽やかな風が流れたあと、グドモ王道の4つ打ちのダンサブルなナンバー“キャッチアンドリリース”と“イチ、ニッ、サンでジャンプ”での大合唱へ突入。会場はハッピーでカラフルな一体感に染め上げられていった。


となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - グッドモーニングアメリカグッドモーニングアメリカ
となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - グッドモーニングアメリカグッドモーニングアメリカ
MCに立った渡邊幸一(G&Cho)は「このツアーに参加できて、新しい音楽との出会いがありました」と振り返り「まだぼくらを知らない人に、もっと音楽を届けたい」と熱っぽく語っていた。ステージのラストは〈今夜旅に出ようか 寂れた心が輝ける方に〉と歌う“輝く方へ”、そして〈希望と絶望が 循環ではなく 未来へのスパイラル〉という“未来へのスパイラル”。思い通りには進まない日常をリアルに認識したうえで、それでも未来へ、輝ける方へ、新たな一歩を諦めない彼らの歌に、大いに共感。「つまらない日常を笑って、楽しもう」という姿勢に、本当の意味でのポジティブさを感じさせる。最後まで腹の底から笑わせてもらい、腹の底から歌い叫び、飛び跳ねた。力にあふれたライブだ。


となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - 8otto8otto
セットチェンジのあと、つぎに登場は、8otto(オットー)。ドラムとボーカルのマエノソノマサキがフロントマンを務めるユニークな編成の4人組、ガレージロック・バンド。2009年のオアシス来日時にオープニングアクトを任され注目された。ステージ中央、一番前にドラムセットを置き、その周りをギターのヨシムラセイエイとリョウ、ベースのTORAが囲む格好でステージを展開する。

となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - 8otto8otto
となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - 8otto8otto
舞台に現れたマエノソノは、マイクをつかんで「I Say シブ、You say ヤー」と絶叫し、「シブ」と叫んだあと、客席に「ヤー」といわせるコールアンドレスポンスを繰り返して、会場を一気に8ottoの空気へ。この不思議な掛け合いに、顔がほころんだ観客も大声でこれに応じる。1曲目の新曲でディスコパンク風ダンスビートで客席が大きく揺れ始めると、早くもマエノソノはドラムセットを離れて、客席へいきなりダイブ。そのあともフロアを歩き回りながら歌い続けた。このカオティックな祝祭感が、実にロック。その間、他の3人がしっかりビートをキープし続けている呼吸もバッチリだ。続く“RIWO”は1stアルバムに収められた代表曲の1つ。そして“GENERATION888”の疾走感バリバリのハードなガレージロックへ。MCでマイクを取ったTORAは「今日は新曲を何曲かやります」といって、ヨシムラにトーキングモジュレーター(ビニールチューブを口に含んでギター音を変えるエフェクター)を使ったリフを弾かせて、「いまどき、新曲にこんなん使うの、おれらだけやろ。」とニヤニヤ。いずれも4つ打ちのバスドラに、うねるベースとファンキーなギターリフが絡むダンサブルなロックチューンで、一度聴いたら、誰でも自然に体がジャンプしてしまうアッパーな曲だった。そして最後は、ファンにはお馴染みの“Hyper Hyper Hyper”と“Say”の2曲で締め。レッドゾーンまでメーターを振り切った熱いロックンロールに、涙が一滴だけ滲んだようなメロディが心をざわつかせる。マエノソノと一緒に「ウォー」と声を張り上げて叫んでいると、ロックの原初的なエネルギーに触れた快感が、全身を走り抜けていった。一度体験したら病みつきになりそうな、圧倒的なパフォーマンスだ。


となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - the band apartthe band apart
そしてトリを任されたのがthe band apart(バンアパ)。楽器チェックのときから、すでにステージに登場していた4人だが、簡単な合図で1曲目“夜の向こうへ”のギターイントロに突入。一瞬で本番モードに。その変わり身がとにかくカッコよい。メンバーの軽快なプレイが、春の光のような明るいプリズムを放射。続いてパワフルな木暮栄一のドラミングがテンションを一気に上昇させる“I love you Wasted Junks & Greens”、荒井岳史の透明感のあるボーカルを生かした“クレメンタイン”、そして原昌和のベースが唸りをあげる“black”へ。中間部の川崎亘一のギター・ソロが、ベースに絡みつき、サウンドのスケールがとてつもなく広がっていくさまは圧巻だ。彼らの演奏力を思い知らされる瞬間である。比較的新しい曲が中心の前半から、後半はやはり歴代の名曲を連打。2本のギターの絡みが美しい“Mercury Lamp”をあいだに挟み、“FUEL”では複雑な曲展開にもかかわらず、掲げられたたくさんの腕が大きな波を打つ。そして最後は名曲“Eric.W”。鋭角的なギターカッティングにラテンのリズムを溶け込ませたグルーヴは、もはや抵抗することは不可能。誰もが声を上げ、腰を揺らし、ジャンプする。さまざまな音楽要素を取り込み、一貫したスタイルで、グルーヴィなロックにまとめあげてしまうバンアパの強靭さ。舞台袖には、彼らの演奏を熱心に見つめるグドモと8ottoの姿もあったようだ。


となりのバンドマンツアー2014  @渋谷CLUB QUATTRO - the band apartthe band apart
MCで原が「グドモのたなしんは、よくうちに泊まりに来たりするんです」と話すと、会場からは驚きの声が。「元々大人しい子なのに、ライブをやって、その変わりようにびっくり」と原も、今回のツアーで大きな発見があったよう。また荒井も「“black”は8ottoのTORA、“Eric.W”はグドモの渡邊くんのリクエスト」とうれしそうに明かしていた。アンコールに応えて演奏したのは“星に願いを”。天上のミラーボールが回り始め、会場には星のキラメキのような光が溢れる。三者三様。個性豊かでエネルギッシュで、芯から音楽やロックが好きだとわかるバンドたちが、次々に本気の音を放射してくれた贅沢なライブ。すべての演奏が終わっても、その明るい光は、詰めかけたファンの顔をいつまでも照らしていた。(岸田智)

セットリスト

グッドモーニングアメリカ
01:アブラカタブラ
02:空ばかり見ていた
03:ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ
04:言葉にならない
05:キャッチアンドリリース
06:イチ、ニッ、サンでジャンプ
07:輝く方へ
08:未来へのスパイラル

8otto
01:新曲
02:RIWO
03:GENERATION888
04:新曲
05:新曲
06:新曲
07:Hyper Hyper Hyper
08:Say

the band apart
01:夜の向こうへ
02:I love you Wasted Junks & Greens
03:クレメンタイン
04:black
05:FUEL
06:Mercury Lamp
07:Eric.W
En1:星に願いを
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