BUMP OF CHICKEN @ 幕張メッセ9・10・11ホール

 
BUMP OF CHICKEN @ 幕張メッセ9・10・11ホール - 撮影=古渓一道撮影=古渓一道
「ていうか、みんな最高なんですけど! 『WILLPOLIS』へようこそ、BUMP OF CHICKENです! 4人を代表して言わせてください。みんな、会いたかったー!」という直井由文のコールに、2万人を超えるオーディエンスに埋め尽くされた幕張メッセのフロアから割れんばかりの拍手と歓声が沸き上がる! 続けて「この会場にいるみんなは、普段は他人同士だけど、今日は同じ音楽を楽しみに来た仲間なんで。気持ち悪い人がいたら……いや、『あいつ気持ち悪いな』っていう人じゃなくて(笑)。気分が悪い人……っていっても『あいつ俺に何かあんのかな?』みたいな人っていうことでもなくて(笑)。体調の悪い人がいたら、みんなで助け合って、今まででいちばんの、最高のライブにしていきましょう!」と語りかける直井の言葉が、肌寒い外の気候が嘘のような場内の熱気をさらに高めていくーー。

前作『COSMONAUT』から約3年3ヵ月ぶり、通算7th・メジャー5thオリジナルアルバムとなる新作『RAY』を引っ提げての、BUMP OF CHICKENの全国ツアー『BUMP OF CHICKEN TOUR "WILLPOLIS 2014"』、その幕開けを飾る千葉・幕張メッセ2Days公演の2日目。『RAY』という作品に結実した音楽的な進化と、初のスタジアム・ライブ/フェス出演/初の武道館公演を含む全国アリーナツアーなど積極的な昨年のライブ活動を経て逞しさを増した4人のバンド・サウンドが、広大な空間を歓喜渦巻くロックの理想郷へと塗り替えた、至上の名演。7月まで続くツアーはまだ始まったばかりなので、この日の内容についてはここでは一部演奏曲目に触れるのみに留めさせていただくが、新作『RAY』の楽曲をトータル2時間半に及ぶライブの軸に据えた充実のアクトだった。

 
BUMP OF CHICKEN @ 幕張メッセ9・10・11ホール
昨年10月の日本武道館公演で初披露された際にはそのエレクトロ&ファンタジックな音像が驚きと感激を呼んでいた“ray”は、完全に今のBUMP OF CHICKENのタフな音の肉体の一部となって雄大なスケール感を描き出していたし、藤原基央&増川弘明の鮮烈なギター・アンサンブル/直井由文&升秀夫のタイトなビートがでっかい包容力をもって響き渡っていたのが印象的だった。昨年夏以降のライブを通して磨き上げられてきた“firefly”“虹を待つ人”は、圧巻の輝度と強度でもってメッセ一丸のシンガロングを巻き起こしていたし、オーディエンスの腕に巻かれたLED内蔵リストバンド「ザイロバンド」の明滅、カラフルな光を放ちながら観客の頭上を舞い踊る巨大バルーン……などなど随所に盛り込まれた演出の数々が、そんな会場の多幸感を天井知らずに煽っていた。さらに、“天体観測”をはじめとするバンプ・ヒストリーの名曲群が「今」の訴求力をもって高らかに鳴り渡り、メッセを揺らすほどの躍動感と祝祭感を生み出していった。

 そして藤原基央。ツアー開催に先立って、3月31日に新木場STUDIO COASTにて予定されていた『RAY』購入者限定ライブ『BUMP OF CHICKEN Live at STUDIO COAST』が、藤原の肺気胸による手術とリハビリのため延期を余儀なくされる、という事態はあったものの、ファンの歓声に「ただいま! ありがとう!」と応え、「楽しんでますか? 僕らもすごい楽しみですーー『楽しみです』じゃねえや(笑)、最高に楽しくやらしてもらってます。どうもありがとう!」と呼びかけながら1曲1曲熱唱していく藤原の姿は、観る者すべての魂を震わせずにおかない力強いヴァイブに満ちていた。そんな藤原の歌が、“ray”の極彩色サウンドとともに響く《寂しくなんかなかったよ ちゃんと寂しくなれたから》という真摯なフレーズや、アルペジオの静謐な光景からハード・エッジに燃え盛るロック・バラードの極致まで描き出した“Smile”の《心の場所を忘れた時は 鏡の中に探しにいくよ》というシリアスな描写の隅々にまで血を通わせながら、その言葉のひとつひとつをオーディエンスの心にひりひりと焼きつけていく。人間の、生命の真実に真っ向から向き合おうとする凛とした意志、それを鳴らすための高純度な言葉と音像ーーBUMP OF CHICKENが当初から鳴らし続けてきたロックの形が、どこまでも揺るぎなく、深遠で、しかも晴れやかに結晶化した『RAY』の世界が、幕張メッセという会場のスケール感と相俟って、強烈なメッセージ性を帯びて観客1人1人を包み込んでいる。それが何より頼もしかったし、嬉しかった。

 「みんな、物理的にも比喩的にもキラキラしてて、感動しました!」と、ザイロバンドきらめく会場を見回して話す増川。「楽しい2日間でした! 全国回ってきます。ありがとう!」とオフマイクで叫び上げた升。「最高のスタッフと一緒に、こんなにカッコいいお客さんに見送られて、全国ツアー、行ってまいります! みんながいないと、俺ら何の意味もないんで。また来てください!」と熱い想いを口にした直井。そして、「明日の朝までやりたいっすよ。でも、朝までやったとしたら、僕なんかもう……『ふえるわかめ』の増やさなかったままみたいな感じになると思うんで(笑)」とオーディエンスを沸かせつつ、「みんなとまた会えるのが当然のこととは思ってないんで。またライブやるんで、よかったら遊びに来てください」と静かに、しかし決然と語っていた藤原。この壮大なスケールの音楽空間を、ライブという非日常空間で作り上げること。それを自らの日常として背負っていくこと。しかもその1本1本に、観客との密接なコミュニケーションを通して「今、ここ」だけの物語を刻み続けること……そんな生き様とそれを支える覚悟が、この日の4人の音と言葉から改めてリアルに伝わってきて、胸が熱くなった。

BUMP OF CHICKEN @ 幕張メッセ9・10・11ホール
「ありがとう。またね。おやすみ! バイバイ!」という藤原の快活なコールと濃密な余韻を残して、幕張メッセ2Days公演は終了。『BUMP OF CHICKEN TOUR "WILLPOLIS 2014"』はこの後、台湾公演『BUMP OF CHICKEN Live in Taiwan 2014』(6月28日)や新木場STUDIO COAST振替公演(7月15日)を挟みつつ、7月31日のツアーファイナル:東京ドーム公演まで続く。ツアーでさらに研ぎ澄まされていくであろう『RAY』の楽曲が、ドームという大舞台で果たしてどれだけのスケールの歓喜と高揚の風景を見せてくれるのか? ライブを観終わったばかりにもかかわらず、「その先」に想いを馳せて胸躍らせずにいられない、最高の一夜だった。ツアー次回公演は4月17日・18日:名古屋・日本ガイシホール2Days!(高橋智樹)
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