ロジャー・ウォーターズ、『ザ・ウォール』ツアー・ドキュメンタリー公開

ロジャー・ウォーターズ、『ザ・ウォール』ツアー・ドキュメンタリー公開

ロジャー・ウォーターズが2010年から13年にかけて行った『ザ・ウォール』のツアーの模様を追ったドキュメンタリー作品『Roger Waters: The Wall』が9月6日にトロント国際映画祭で初めて公開された。

作品はツアーのライヴ映像とともにロジャーの個人的な旅を織り合せた内容で、ロジャーの強い反戦意識を打ち出したものになっており、133分の長さに仕上がっているという。作品にはアルバム『ザ・ウォール』収録曲の26曲がすべて収録されていて、ロジャーはビルボード誌に次のように語っている。

「映画での唯一の違いはぼくが祖父と父の墓を訪れるロード・ムーヴィーを挿入してあるところなんだ。まあ、正確に言うと父については遺体が見つからなかったから、墓はないんだけど。父は第二次世界大戦で1944年にイタリアのアンツィオで戦死したんだけど、戦没記念碑には名前があるから映画ではぼくはそこを訪れるんだよ」

「基本的にこの映画はぼくが過去の友人らといろんな重要で象徴的な場所を訪ねていくものになってるんだ。ロード・ムーヴィーの要素がコンサート映画の要素とうまく折り合って、コンサートでも訴えたことをもっと強調してくれると嬉しいんだけどね」

ザ・ウォール・ツアーだけでなく、ロジャーが2006年から08年にかけて行った『狂気』ツアーなどでも美術監督を務め、今回のドキュメンタリーで共同監督を務めているショーン・エヴァンスは今回のロード・ムーヴィーの要素やこのドキュメンタリーとしてのメッセージ性について次のように解説している。

「そもそもロジャーに『ザ・ウォール』という作品を書かせるように突き動かしたものと関連してるんだよ。ひとつの大きな円のようなもんで、すべてが最後にまとまっていくところが素晴らしいと思うよ」

1979年にリリースされたオリジナルのアルバム『ザ・ウォール』は、父親が戦死したという設定のロック・スターがその生い立ちから経験してきた社会的な抑圧や孤独感、自身が抱えている自己破滅的な衝動などを描いた作品となっているが、今回の『Roger Waters: The Wall』では、戦争は商売として行われているものであることと、その代償はとてつもない傷痕として人間の生き様に刻まれていくことを特に強調しているという。ロジャーは作品が持つメッセージが変化してきたことを次のように解説している。

「ぼくがこの作品を書いたのはほぼ40年前のことなんだ。でも、1977年にモントリオールでキッズに唾を吐きかけた不機嫌なやつ(実際に起きた出来事で、ピンク・フロイドとしての初めてのスタジアム・ツアーを経験し、大きな不快感に捉われていたロジャーは口うるさくわめき続けていたファンに唾を吐きかけるという行為に出た。この時の自分の行為を解き明かしていくことにより、ロジャーは『ザ・ウォール』の構想を得た)と較べるともっと広いメッセージをこの作品ははらんでいたことに数年前になって気がついたんだよ」

「もっと普遍的なメッセージがあるということをね。それは熱く反戦を問うもので、戦争というのはビジネスでしかないことを訴えるもので、まるでスメドリー・バトラー少将が『戦争は大ペテンだ』と主張したことそのまんまなんだよ(バトラー少将は第一次世界大戦中に活躍したアメリカの海兵隊の将軍で、引退後『War Is a Racket〔戦争は詐欺だ〕』という講演集を刊行し、戦争が金儲けの道具でしかないことを説いて回る活動家となった)。すべて人間がどうやって儲けるかという話でしかないんだ。戦争の被害を受ける人たちにとってはなんの足しにもならないものでしかないんだよ。しかも、現代の戦争では犠牲になるのは大半が民間人なんだからね」

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