「Galileo Galileiを忘れないでほしい」 ラストツアーで彼らは何を鳴らし、何を残したのか
2016.04.11 19:50
2016年4月6日、Galileo Galileiの全国ツアー「Galileo Galilei "Sea and The Darkness" Last Tour 2016」の追加公演が恵比寿LIQUIDROOMで行われた。RO69では、この模様をライヴ写真とレポートでお届けする。
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恵比寿LIQUIDROOMの2階ロビーにはファンからの寄せ書きをしたフラッグが飾られていた。「大好き」「いつも支えられてます」「ありがとう!」。今年1月にリリースした4枚目の『Sea and The Darkness』を事実上のラストアルバムとして、活動終了を発表したGalileo Galilei。全国19ヶ所のラストツアーも遂に彼らの地元・北海道を残して、東京での最後のライヴを迎えた。まず目に飛び込んだファンからの温かいメッセージ。そこにまずGalileo Galileiというバンドが歩んできた時間の重みを思い知らされた。
開演。静かにメンバーが楽器をスタンバイすると、“Sea and The Darkness”からライヴはスタートした。尾崎雄貴(Song Writer, Vocal, Guitar, Bass, Keyboard & Programming)、尾崎和樹(Drum, Percussion, Piano & Programming)、佐孝仁司(Bass, Keyboard)のオリジナルメンバーの両サイドを、ふたりのギタリストが挟みこむ5人編成のフォーメーション。鳴らされるのは、そのひとりひとりの楽器が強い個性をもって響き合う、躍動感のあるサウンドだった。これまでもGalileo Galileiは作品ごとに革新的なチャレンジを重ねてきたがゆえに、ツアー毎に見せる印象を大きく変えながら進んできた。そんな彼らがラストツアーに選んだ音色は、そこに脈打つ命を確かに感じるような生々しさがあり、バンド史上最も等身大の自分たちを表すアルバム『Sea and The Darkness』の空気感に相応しかった。
公式サイトで発表されていたとおり、ライヴは『Sea and The Darkness』を完全再現しながら進んでいった。イジメられっ子の逆襲を歌った“カンフーボーイ”、葬式や人の死をテーマにした“ウェンズデイ”。決して晴れることのない翳りを纏いながら、その音色に湿り気がなくカラリとしていた。暗いとか、明るいとか、インディーロックとか、邦楽ロックとか、そんな一言では表し切れないけれど、なんか好き。思えば、Galileo Galileiがずっと求めてきたのは、そういう居心地の良さだった。アルバム音源よりも長めのセッションを聴かせた“ベッド”や“燃える森と氷河”。5人のちょうど真ん中に立つ雄貴はバンマスのようにぐるりと全員の顔を見渡して、その音楽に没頭しているようだった。
和樹がキーボードを弾き、その脇で雄貴が歌う小さな編成で聴かせた“日曜”まで、MCを挟む間もなく8曲が終わった。「今日は追加公演。いままでやったことある……?」(雄貴)、「あるよ」(和樹)、「(MCの)話題にならないな(笑)。じゃあ、次の曲いこっか」(雄貴)。そんな短いやりとりだけを残して、すぐにメンバーは演奏へと戻った。瑞々しいイントロに心踊る“恋の寿命”からの後半は、よりバンドの演奏が熱を帯びてエモーショナルになっていく。圧巻は、激しく明滅する光の中、まるで苛立ちを爆発させるような雄貴の歌唱に惹きこまれた“ブルース”。そして、剥き出しの感情を歌に込めた“青い血”から、和樹が叩く大らかなリズムにのせて届けたラストソング“Sea and The Darkness II (Totally Black)”。サックスの柔らかい音色と共に、雄貴が《闇夜の中では 全てが黒色/それでもいい》と歌い上げたナンバーは、それが闇の歌か、光の歌か、明確な答えなんて持たなくても、音楽とはこんなにも心を昂揚させるのだと証明する名演だった。
アンコールでは、「今日あと2公演になって、やっと少し切ない気持ちが湧いてきました。いまは悲しい気持ちです」と、初めて少し感傷的な言葉を漏らした雄貴。最後に「Galileo Galileiを忘れないでほしい。これからもGalileo Galileiをよろしくお願いします!」と、締めくくった。アンコールで5曲を披露して、後ろ髪を引かれる風もなくステージを去っていったメンバー。軽く手をあげる姿は「また会おう」と言うような、いつもどおりの雰囲気だった。Galileo Galileiとしての活動はここで終止符を打たれる。だが、尾崎雄貴、尾崎和樹、佐孝仁司が鳴らす音楽には、たぶんまた会える。これはきっと始まりのラストツアーだ。
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