【『カルテット』四夜連続自由研究④】神ドラマを彩った20のごはん
2017.07.08 18:00
ドラマ『カルテット』にとって「ごはん」は「音楽」と同じぐらい重要。主人公が4人いるこの物語においては、「音楽」や「ごはん」といった、家族じゃないのに大切な居場所を共有している4人を繋いでいるものたちが本当の主役だったのかもしれない。
《第1話》
唐揚げ
4人が別荘にそろって最初の食事は、大皿に盛られた唐揚げが中心。しかし、すずめ(満島ひかり)と別府(松田龍平)が唐揚げにレモンをかけ始めるといきなり問題勃発。
家森(高橋一生)「レモンするってことはね、不可逆なんだよ」
中盤の巻夫婦(松たか子/宮藤官九郎)のこと、そして最終回の「サンキューパセリ」まで繋がる、シリーズ最重要「ごはん」。
卵かけご飯
マンションでひとりで真紀が、「公園の池から四十代男性のものと見られる遺体が発見されました」というニュースを聞きながら、もそもそ食べているのが卵かけご飯。別の回で、巻鏡子(もたいまさこ)がひとりで卵かけご飯を食べているシーンも。ひとりのときに食べることが多いごはんの象徴か。
《第2話》
ブイヤベース
餃子の話をしながらブイヤベースを食べる真紀、すずめ、別府。
家森「そうやって話されると、餃子食べてる気がしてくるんですよね」
餃子の話をしないように「餃子は嫌い」と自分に言い聞かせる3人。
家森「嫌いになろうと思えば思うほど、好きになるでしょ?」
食べ物の話は、なぜか男女の話に似ている。
チャーシュー丼
夜食のためにわざわざ七輪を出してきてチャーシューを炙る家森。
真紀「夜中のご飯は不倫と同じ味がするそうです」
やはり食べ物の話は、なぜか男女の話に似ている。
富士そばの肉そば
別府が真紀を初めて見たのは大学の文化祭のとき。二度目は、ヤマダ電気のマッサージ機。三度目はが富士そばで肉そばを食べているときだった。
別府「何で肉そば食べてる真紀さんに声かけなかったんだろ」
サッポロ一番しょうゆ味
酔った勢いで一線を越えてしまった別府と九條(菊池亜希子)。朝、ベランダで一緒にサッポロ一番食べたら美味しかった。それがふたりのクライマックス、それでよかったのかな。
《第3話》
湯豆腐
おたまで豆腐をすくって運んでいる途中、お湯がこぼれて腕にかかったらとにかく熱いのです。珍しく、あまり意味深じゃない「ごはん」。
かつ丼
蕎麦屋。恨んでいる父親の死に目に立ち会わなかったすずめを真紀は病院に行かせようとするが、すずめの思いを理解すると、病院に行かずに軽井沢に帰ろうと言う。そして真紀の名言「泣きながらご飯食べた人は、生きていけます」
《第4話》
おにぎり(しゃけ/おかか)
家森を追いかけて別荘まで乗り込んできた謎の男・半田(Mummy-D)。食卓のおにぎりを勝手に食べる。
家森「半田さん、それは僕のおかか……」
そして家森のヴィオラを持っていく。おにぎりを触った手で……。
アジフライ
みなさんはソースと醤油、どちらが正しいと思いますか? 正解は――ソースでも醤油でも食べられる方がモテるらしいですよ。
《第6話》
パエリア
鉄鍋に入った熱々のパエリアを食卓に運んできた旦那さんに「鍋敷き!」と言われたら、とりあえず手近にある鍋敷きになるものを慌てて差し出す奥さんもいるかもしれません。しかし、それが旦那さんからもらった本ではないか一瞬、考えましょう。図らずも旦那さんは、パエリアを持つ手と、本をあげた自分の心、どちらかを鉄鍋で焼かれてしまう二択を迫られているかもしれません。でも旦那さんも言いたいことがあるときは、失踪するまで溜め込まず、はっきり相手に伝えましょう。
《第7話》
おでん
そして旦那さん、話の腰を折られたのが嫌だったのか、おでんに柚子胡椒が嫌だったのか、最初から別れ話をするつもりだったのか、もう少しはっきり伝えてもらえないですかねー。
お好み焼き
おでんでごはんを食べる人、食べない人。お好み焼きでごはんを食べる人、食べない人。違う家庭で育った、違う常識を持った人が一緒にごはんを食べることを楽しめる人でありたいものです。
《第8話》
鏡子の作ったごちそう
自分たちで作ったごはんを食べるのも幸せだけれど、作ってもらったごはんを食べるのも幸せ。だけど、食べる前にパッチワークの先生の話を延々と聞かされるのは勘弁願いたいものです。そんなときは“だるまさんがころんだ”状態、または“みんなで渡れば怖くない”状態で、説教に夢中になっている人が後を向いている隙に、みんなでフライングして食べまくるしかないですよね。
ナポリタン
すずめは、別府とふたりで別荘の食卓でナポリタンを食べる夢を見る(実際にすずめが別荘に来て初めて食べたのはナポリタンのようだ)。別府は、自分のエプロンを外して、すずめにかけてあげる。
別府「ナポリタン危険です。白い、綺麗なお洋服だから」
「お洋服」という言い方がポイント。
ざるそば
すずめが夢から覚めてリビングに降りてくると、別府はエプロンをして湯切り網を持っている。そして自分が白い服を着ていることに気付く。しかし食事はざるそばだった。すずめは自分の汁にも、別府の汁にもわさびをたっぷり入れる。そのあと家森、真紀も入れ代わり立ち代わり席に座ってざるそばを食べるのだが4人全員、わさびで「つん!」となる。
《第9話》
中華丼
すずめ「真紀さんみたいに嘘がない人と出会ってたら子供の頃も楽しかったかなぁ」
そう言われながら中華丼を作っている真紀が、嘘の人生を生きている人だということをもう視聴者は知りながら観ている。尊い時間の終わりが近づいている予感のシーン。
ご飯/みそ汁/焼き魚/きんぴら/お新香
真紀が警察に同行した後、3人でした最初の食事がこれ。いつもおかず中心の食事をしてきたのが、ちゃんと冷蔵庫の中身を確認して、ちゃんと味見をして、ちゃんと全員がそろって、ちゃんと席について、ちゃんと「いただきます」を言って食べ始める、はじめてのちゃんとした食事。ちゃんとしていることが、こんなにも寂しく感じるなんて。会話がないことが、美味しそうなはずの食事の風景から、こんなにも「味」を感じさせなくするなんて。
《第10話》
ピェンロー
肉、白菜、春雨などを煮込んだ中国の鍋料理、ピェンロー。春雨が長すぎて小皿に入れても切れないこと、ありますよね。椅子に立ち上がってまでして取ろうとする家森が可愛い。
チーズフォンデュ
真紀が別荘に戻ってきて4人で食べる最初の食事。手包み餃子と同様、大好きな仲間たちと一緒に食べると美味しい「ごはん」の究極のひとつかもしれない。
4本の記事を最後まで読んでくれたみなさん、ありがとう。
ドラマ『カルテット』、たくさん観返しましょう。
パセリが最後じゃないのかって?
パセリは「ごはん」ではありません。
だけどサンキューパセリ!
(古河晋)