星野源、日本中の『ANN』リスナーを音楽で繋いだラジオブースからの「2時間生演奏」

8月22日深夜1時に放送された『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)では、ゲストにバンドメンバー5人を迎え、「2時間生演奏!星野源 Live Tour 2017『Continues』in ラジオブース」と題された企画が生放送で行われた。

その名の通りラジオブースに楽器を詰め込み、現在星野がホールを回っているツアー「Continues」のラジオブース版として2時間生演奏でリスナーにライブを届けるこの企画。この番組では去年8月に「2時間生演奏!星野源しか出ない夏フェスinいつものラジオブース」という、星野のオフィシャルイヤーブック『YELLOW MAGAZINE 2016-2017』の特典としてCD化もされている企画が放送されており、今回は1年ぶり2度目のバンド生演奏回だった。

バンドメンバーは長岡亮介(G)、伊賀航(B)、伊藤大地(Dr)、櫻田泰啓(Key)、石橋英子(Key)という星野が普段行うライブ同様のメンバー。作家・寺坂直毅によるライブ恒例の口上から“夢の外へ”のイントロが奏でられ2時間のライブはスタートした。

去年の生演奏にはスケジュールの都合で参加できなかった石橋のコーラスと星野の歌声が合わさり、早くも最高のライブが幕を開ける予感。生演奏ならではのアレンジの効いた長岡のギターや櫻田のキーボードに、密室で行われているセッションを聴いているようで、ラジオから流れてくるCDを聴くのとは明らかに訳が違う、確実に「ライブ」を聴いている昂ぶりが沸き上がって来る。

星野が声を漏らすように「あぁ、楽しい……」とつぶやいた後、タイトルコール。もちろん、オールナイトニッポンお馴染みのオープニング曲“Bittersweet Samba”も生演奏。CM後、届いた感想メールを読み、バンド紹介へ。星野のバックでドラムを叩くのは去年の紅白以来という、伊藤との付き合いの深さを感じさせるトークなど、なかなか聞けないバンドメンバーと星野のやり取りが聞けるのもこの企画の楽しみの1つだ。

去年のラジオブースでのライブを振り返ったのち、2曲目“Night Troop”、続けて3曲目“雨音”を披露。どちらの曲もライブでのゴージャスでグルーヴィーなアレンジが人気の楽曲。“雨音”はCDでは星野が自宅にてひとりで録音する「House ver.」で収録されているため、石橋がソウルフルに鳴らすフルートなどバンドでの演奏によって音源とは一味違う魅力の楽曲になっている。

「会場での落とし物情報」など去年同様、リスナーからの妄想力溢れるメールを読んだり、レギュラーコーナー「豚野郎」のBGMで流れているTHE JAYWALKの“何もいえなくて・・・夏”を即興で歌ったり、生BGMをバックに下ネタのメールを読んだり、と星野のエンターテインメント性をそのまま表現するように音楽も下ネタもごった煮の深夜ラジオの醍醐味のような時間を過ごすと、リスナーのメールから新曲“Family Song”がオリコンウィークリーチャート1位を獲得した話へ。配信盤も単曲ではなくシングル4曲を購入してくれる人が多いことに触れ「1曲目から4曲目まで、全部作品性をしっかり持たせたいなー、と思いながら作ったのでとても本当に嬉しいです」語った。

星野が『オールナイトニッポン』50周年を記念して作曲した、曜日問わず『オールナイトニッポン』と名の付く番組共通で今年から使用されているジングルも生演奏で披露。「一番人気」だという、星野のライブや作品ではなかなか聴けないギターを歪ませたロックなジングルで実際にCMへ。

4曲目は2013年発売5thシングル曲“ギャグ”。近年の星野源とは切っても切り離せない関係の長岡亮介が初めて星野作品に参加した、イントロのギターのリフに心躍るアルバム未収録ながら人気の楽曲で盛り上がる。

「みんな、一緒に踊ろう」と呼びかけ続けて演奏されたのは“恋”。原曲のストリングスと二胡をドラムとキーボードで表現。きっとラジオの前で大勢のリスナーが「恋ダンス」を踊ったことだろう。

再びレギュラーコーナー「夜の国性調査」もBGM生演奏で実施。ギター長岡の人力フェードアウトに笑いが起きる。

星野が「喉が爆発するぜ」と言いながらも掛け声部分を8回に増やし再びジングルを披露。メンバーのキャッキャッとした声に、純粋に演奏の楽しさが伝わってくる。

ライブでお決まりの「アンコール予告」をしたのち6曲目“時よ”へ。狭さゆえの使用楽器の制限により可愛らしいピコピコとしたイントロや間奏が新鮮。《バイバイ》で締められる歌詞に楽しかったライブの終わりを感じていると、ツアータイトルでもある本編最後の曲“Continues”へ。「音楽はね、全部繋がっていて、続いていきます」という星野のメッセージが、細野晴臣へのリスペクトでありながら決して真似ではなく、「今」の音を鳴らしている“Continues”という楽曲を通してより強く感じる。《命は伝う/君の想いを繋ぐ/星に響いた音は/次の誰かを照らすんだ》と歌い、アウトロではバンドメンバーで大合唱。星野も「ラジオの前のあなたも一緒に歌おう」、「今、まさに仕事中のあなたも!」などと呼びかける。確実にラジオの「向こう側」と「こちら側」が手を取り合い、歌い、体を揺らす。まさしくライブ会場に居るような、そんな感覚に陥る瞬間だった。

「アンコール! アンコール!」とだけ書かれたメールを読み、ライブは「本当に」最後の曲へ。前回のラジオブースでのライブがきっかけで『おげんさんといっしょ』(NHK)のキッチンでのライブが生まれたことや、「楽器で、直の音が聴こえる距離でやるっていうのは、アレンジにも影響がある」とプレイヤー同士が近い距離でのライブの魅力を改めて語った。

アンコールは番組のエンディング曲である“Friend Ship”。アウトロは星野自身もギターを持ち轟音を鳴り響かせる中、「日本全国~!」と叫び深夜2時間のライブinラジオブースは幕を閉じた。

普通のライブならその土地や会場名を叫ぶのが常なところで、去年のラジオブースでのライブ同様、今回も星野は頻繁に「日本!」と叫んでいた。ライブは目の前の観客に向けて行われるものだが、逆に言えばそれは会場に居ない、行けない人たちはなかなか楽しめないことになる。しかし、ラジオでライブを行えばもっと簡単に、チケット代もなしで誰でも楽しめる。そんな素敵な環境がこの「日本!」という叫びに表されていたと思う。
「ラジオの前の最前列」という表現やリスナーからの会場情報のメールなど、星野が常々語る「遊び心」がスタッフやリスナーの手によって演出されていて、ラジオを消した後も2時間のライブを観に行ったような満足感に浸れる放送だった。(菊智太亮)
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