ビョーク、自問自答インタビュー。新作『Utopia』とアルカとのコラボレーションを語る

ビョーク、自問自答インタビュー。新作『Utopia』とアルカとのコラボレーションを語る

11月に新作『Utopia』をリリースすると報じられているビョークだが、「W Magazine」に「自問自答インタビュー」を掲載し、新作の意図やアルカとのコラボレーションなどについて語っている。本記事では、同インタビューの一部を紹介する。

まず冒頭は、以下のようなビョークによるエッセイから始まる。

おはようございます。というわけで、ものすごく眠いんだけど、最後のファイルをマスタリングに送って、アルバムの準備もできた……! と思っていたところへ、自分への質問を考えろってことで……うーん……自分にどういうことを聞きたいか。微妙なところだし、10代の頃の自分になにを聞きたいですかとか、そういうありがちな質問って実は個人的に好きだったりもするし。だったらその逆でいってみる? 未来の自分になにを聞きたいですかとか、そういうね。


Björk - big time sensuality

たとえば、自然の中で、音楽を作るのに必要な温かい空間がすべて揃っていて、空気には愛に満ち溢れたところに自分がいるという図をわたしは思い描いているんだけど、そういうことはわたしに本当に起きるのか、とか。っていうか、そういう場所はもうアイスランドの山小屋で実現させているんだけど、これが常にフルタイムで用意されていることって可能なの? この状態はずっと長い間、求めていたものなんだけど……

それとわたしが愛している人たちは健康で幸せなのでしょうかとか。わたしからなにか助けになることはできるのでしょうかとか……

でも、一番知りたいのは、わたしは音楽についてずっと勇敢なままでいられるのかってことだろうな。


Björk - Human Behavior

昨日寝る前に超ありきたりな雑誌的質問をいろいろ考えようとしたんだけど、でも、あまり気分が乗らなくて。でも、とりあえず答えていくべきなのかな。答えていくうちに、ウォームアップになるかも。日常の儀礼的なこととか、橋とかトンネルとかもそうだから……たとえば、能の舞台の花道とかそうだから。観客の目の前で役者が楽屋から舞台へと向かうその過程での歩みが、史上どんな出し物よりも遅いっていう。ある意味で舞台そのものよりも長大で重要なところもあるっていうか。

とにかく。最初のまともな質問から始めるわね。


アレハンドロ・ゲルシ(アルカ)と仕事をしたのはなぜですか。


『ヴァルニキュラ』の最後の方ですごく深いところでアレハンドロと繋がっている感じがしたのね。あんなドラマティックで難しいテーマの作品に引きずり込んでしまったことを後ろめたくも思ったけど、おかげでふたりである軽さも獲得できたし、わたしのこの使命みたいな作品にアレハンドロはあれほどの優美さと品格をもたらしてくれたから、わたしの心痛という題材を抜きにして、理想的でユートピア的な音楽コラボレーションができる別な取り組み方や視点を探したいとも思ってて。


Björk - mouth mantra

でも、そこには今もわたしたちにはわからないもっと深い目的を感じていたということもあった。

ただ、それは自分のアルバムをひとりで作れるミュージシャンがそれでもひとつになろうとすることと関係することで、作品が完成して今振り返ってみると、わたしたちとしてはガードやエゴを取り払いたがっていたのだと、父権主義やヒエラルキーなどをすべて取り払って、純粋にすべてを捨て去って誰も犠牲者とならないところに行ってみたかったんだと思う。


次のページ次回作のタイトルは『Utopia(理想郷)』。ビョーク自身の理想郷は実現したのか?
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