WANIMAが新曲”ヒューマン”でより大きく遠くまで鳴らした「諦めることを諦めた」幸福のメッセージ

WANIMAが新曲”ヒューマン”でより大きく遠くまで鳴らした「諦めることを諦めた」幸福のメッセージ
「音楽」というものはもとより、祈りを託す道具である。さらに言えば、ある種、切っても切り離せない存在だ。それをWANIMAはよく知っている。だから《夢で逢えたら手を繋いで/諦めないでどうか耐えて/また逢える日まで》と歌う“また逢える日まで”や、“ともに”での《この想いよ 届け》という一節が生まれたのだろう。彼らは、自分たちが生きる世界の中で見つけた祈りを音に込めている。そして、いつの間にか、そこに聴き手の祈りも託させてくれるのだ。目には見えない音楽というところでリスナーと繋がっている、ビジュアルに似つかずかなりロマンティックだ。

パワフルなサウンドを持つWANIMAに対して、「底抜けに明るい」というイメージを持っている人が多くいると思うが、この”ヒューマン”を聴いたら、その全てが吹き飛ぶ気がする。だからと言って、目新しい斬新な手法がこの曲に詰められているわけでもない。どこか哀愁漂うスローな調子で曲が始まったかと思えば、そのすぐ後にはアップテンポで痛快なビートやギターリフが聴こえてくる。フジテレビ系木曜劇場『刑事ゆがみ』の主題歌として書き下ろされた曲ということだが、この曲で歌って踊っている熱いモッシュピットがすぐに想像できてしまう。ダイナミクスがちゃんと確立されているから、再生ボタンを押すだけで感情の起伏が手に取るようにして分かるのも、WANIMAならではだ。

ただ、ここで勘違いして欲しくないのは、彼らはただ単に苦しみや悲しみをポジティブなものにすり替えているわけではないということだ。《浮かんで消えた想いが/絶えず増える心のアザが/“シビれるような明日を”/最後に たぐり寄せ…》という言葉は、彼らが心の底から「聴いてもらいたい!」と思っているからこそ、等身大でまっすぐに聴こえるのだ。素朴な雰囲気のイントロが終わり、思い切りの良い爆音が鳴ったら、脳内は一瞬で漂白され、次に色付くのは驚くほどカラフルな色だ。そして、最後にやってくるのは、あたたかさ。普段唾を吐きかけたくなるような日常の中にいても、彼らの音楽が流れている時間だけは、どうしたって幸福感に満たされてしまう。この曲でWANIMAが歌っているのは、これまでと変わらず、「諦めることを諦めた」ということ。今年5月にunBORDEからリリースされたシングル収録の“CHARM”で《新しい歌が遠くにいるあなたに届くように》と歌った祈りは、なにひとつ溢すことなく、むしろその想いが増大して届いた。この“ヒューマン”という曲に、WANIMAはWANIMAの音楽を鳴らし続けて闘わなければならないし、わたしたちもずっとWANIMAの音楽を聴き続けなければならない。そんなことを強く思った。

来年1月に発売が決定しているニューアルバムへの収録が決定しているものの、現段階では音源しか配信リリースされていないので、WANIMAの3人がこの曲をステージで演奏する姿はまだ観ていないが、絶対に笑顔で楽しそうに日本語ロックを掻き鳴らすんだろう。それにしても、音源だけだというのに、聴いて開始20秒で思わず笑ってしまう。彼らには、とことんまで幸せにしてもらおうじゃないか。(林なな)
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