テイラー・スウィフト新作『レピュテーション』はこれまでの作品と何が変わり、何が変わっていないか

テイラー・スウィフト新作『レピュテーション』はこれまでの作品と何が変わり、何が変わっていないか
テイラー・スウィフトがニュー・アルバム『レピュテーション』によせて自ら寄稿している“私が人々について学んだこと”と題した文章が凄い。
特に象徴的なのは、以下の一節。

「今の時代は、自分の人生の物語全体を、インターネット上に記録した写真で振り返ることができる最初の世代で、それと同時に、私たちは皆、やがてその後遺症に気づくことになる。結局のところ、人が写真をネットに投稿するのは、自分のことを見知らぬ他人にどう思ってもらいたいか、キュレーションするため。とはいうものの、目が覚めて鏡を覗けば、そこに映っているのはシワや傷跡やシミのある顔で、嫌気が差してしまう。私たちが願うのは、同じ起き抜けの顔を見ても、そこに未来や、パートナーや、永遠を見出してくれる誰かに、いつか出会えたらということ。物語のあらゆる側面を知り、そして“私”という万華鏡をあらゆる角度から見た上で、それでも選んでくれる誰かに」

このアルバムでのテイラーは、恋というプライドと欲望を賭けたゲームにおいて無慈悲なくらい圧勝し続ける最強の戦士のよう。
今までのテイラーだと思って聴くと、男の子も女の子も少なからず戸惑うか、気圧されてしまうかもしれない。
しかし自分の感情にどこまでも正直に恋をして、そこで得たもの、失ったものすべてを全身で大きく深呼吸するように音楽にしているという意味では今までのテイラーと変わっていない。
変わっているのは、相手の本当の姿を知ることがどんどん困難になり、かつ自分の本当の姿を伝えることがどんどん困難になる「今の時代」。
ただ、そこに向き合う気迫、エネルギー、潔さが半端なく、結果的にポップ・アーティストとしてのテイラー・スウィフトの底知れなく深い業に聴く者を巻き込んでいく問題作になっているということだ。
でも誠実にアルバムを最後まで聴きこんでいくと、実際にテイラーの人生の物語の万華鏡が見えてきて、彼女が無慈悲な恋の戦いを越えながらも本当の愛に一歩ずつ近づいているのが感じられる感動的な作品でもある。
今の巨大な影響力も大胆不敵なくらい駆使しながら、その届け方も含めて、ときに時流に逆らうことも辞さずに、あくまでも自己流を貫いて、トータル・アルバムとしてテイラーが伝えようしているメッセージの深いところまで多くの人に到達してほしい。(古河晋)
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