ポルノグラフィティ、デビューから最新作『BUTTERFLY EFFECT』までを貫く信念の軌跡

ポルノグラフィティ、デビューから最新作『BUTTERFLY EFFECT』までを貫く信念の軌跡
ポルノグラフィティが“アポロ”でメジャーデビューしたのが1999年9月のこと。一度耳にしたら忘れられないアタック感の強いキャッチーなメロディと、岡野昭仁(Vo)の唯一無二とも言える淀みのない、言葉の礫がぶつけられるような歌声に、これまで存在したどのバンドにも似ていない強烈な個性を感じたのを覚えている。J-POPという言葉がすでに定着していた時代ではあるが、その言葉の曖昧な定義の中でも、ポルノグラフィティというバンドの存在は、いい意味で浮いていたと思う。シーンの中でどこにも属さない、完全にオリジナルな存在として、当時も今も多くのリスナーに認識されているはず。

ポルノは、新藤晴一(G)と岡野昭仁がそれぞれにソングライターとして曲作りをしているし、ふたりの共作となる楽曲も数多い。もちろんデビュー当初から彼らは自分たちの曲で勝負したかったはずである。しかし“アポロ”は作詞こそ新藤の手によるものだが、作曲やプロデュースを本間昭光が担い、それから長らくシングルの表題曲は、詞・新藤、曲・本間で作られたものが多かった。カップリング曲では、新藤、岡野、それぞれが作曲した楽曲も初期の頃から収録されていたし名曲も多いのだが、表題曲を自分たちの手で作ったもので押し出していけないことにジレンマを感じていたことだろう。

2002年、8作目のシングル曲“幸せについて本気出して考えてみた”も、作詞は新藤。当時この曲を聴いた時に、彼らの抱える葛藤に少し気づいたような、そんな記憶がある。現在の自分が少年時代の自分に語りかける歌詞──《がっかりしたかい 小僧の僕 マイケルにはなれなかった》と、キング・オブ・ポップとして君臨していたマイケル・ジャクソンのような存在にはなれなかった自分が、《ただ僕は大好きな幸せの種を手に入れた》と、決してここで終わるのではないという意思を表明する。そして、このシングルのカップリングには“TVスター”という作詞・作曲ともに新藤が手がけた楽曲が収録されているのだが、この曲は強烈なアイロニーに満ちていた。《なんだ?アーティストって/悲しきTVスター?/身を切って創って それまで/グラム売りをするようなもんか…》。痛烈な言葉に、彼らの苛立ちが見え隠れしていて、ポルノグラフィティというバンドにさらに興味を惹かれた。

新藤、岡野、それぞれがソングライターとして評価を得て、ポルノグラフィティというバンドとしてのクリエイティブが広く認識され、彼ら自身がやりたい音楽を追求していけていると強く実感し始めたのは、おそらく2006年のアルバム『m-CABI』もしくは2007年に『ポルノグラフィティ』というセルフタイトルを冠したアルバムをリリースしたあたりからではないかと推測する。『ポルノグラフィティ』収録曲は、ふたりそれぞれが作詞・作曲を手がける楽曲が多く、“Please say yes, yes, yes”(新藤作詞・作曲)や“そらいろ”(岡野作詞・作曲)など、その後の彼らの財産になるような名曲も生まれた。そして、2010年の『∠TRIGGER』では、収録曲はすべて彼らの手による楽曲で制作されるに至った。続く2012年の9作目となるアルバム『PANORAMA PORNO』では、より彼らの多様性やロックバンドとしての可能性が押し広げられ、江口亮や田中ユウスケといった気鋭のアレンジャーとの出会いもあり、現在のポルノの制作にもつながっていく進化を見せつけた。そのひとつの到達点が、2015年のアルバム『RHINOCEROS』であり、先にリリースされていたシングル曲“オー!リバル”だったとも思う。

もともと、“サウダージ”や“アゲハ蝶”といった、初期のヒット曲に見られるようなラテン調の楽曲は、彼らのひとつの持ち味であり、実際、岡野のボーカルにはそうした叙情的なメロディがとてもよく似合う。彼らがそれを「強み」と認識したのが“オー!リバル”なのではないかとも思うのだ。そう考えていくと、ポルノのこれまでの歩みは決して回り道だったのではなく、現在にたどりつくための必然だったのだと、『RHINOCEROS』は確認させてくれる作品だった。そして、今年10月にリリースされた最新作『BUTTERFLY EFFECT』へとつながるのである。

「バタフライ効果」という言葉は、蝶の羽ばたきほどの些細な現象が、巡り巡って大きな影響を及ぼすという意味で使われる。『RHINOCEROS』に感じた自信、そして、今年の夏フェスで多くの音楽ファンに熱狂的に受け入れられた現実──まさにポルノグラフィティは19年の時を経て、予想をはるかに上回る影響をシーンに及ぼしてきたことを、多くの人が今感じているところではないかと思う。『BUTTERFLY EFFECT』について新藤は「それこそ世の中には、何十万曲、何百万曲と、数え切れないほどの曲が存在していて、その中に自分たちがさらに1曲加える意味について考えると、ちょっと立ち尽くしてしまうような瞬間もないわけではなくて──」(『ROCKIN’ON JAPAN』1月号インタビューより抜粋)と、自分たちの楽曲を、わずか一滴の雨に例えたが、大海へとたどりつくためには、その雨粒を一粒一粒ドロップしていくより他に表現のしようがないことも、誰より理解している。そんな思いで紡がれた楽曲の数々が、後に何の影響も生まないわけがないのだ。『BUTTERFLY EFFECT』の骨太でダイナミックで洗練されたサウンドを聴いていて、そう思う。

ポルノグラフィティは来年9月に、デビュー20周年のアニバーサリーイヤーに突入する。ここまで世代を超えて多くの人に愛されるバンドになったのは、デビュー当初から、しっかりリスナーの思いに寄り添い、求められるものに真摯に向き合いながら、自分たちの表現を追求してきた結果だと思う。当初は「プロデューサーさんの力を借りて、太いレールを最初に敷いてもらったようなスタートだったと思う」(岡野/同インタビューより)と語っていたけれど、太いレールを走る車体は、それ自体に十分な加速がなされ続けなければ、簡単に失速してしまうものだ。そこを見事に駆け抜けて、様々な景色を見せ続けてくれたことが、今の彼らの強さや自信につながっている。『BUTTERFLY EFFECT』を聴いていると、なぜかポルノの過去作も遡って聴き直してみたくなるから面白い。来年のアニバーサリーイヤーに向けての活動も、今から楽しみだ。(杉浦美恵)

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