星野源と藤井隆のカラオケパーティーを聞いて、ふたりの音楽の「裏」ルーツを感じた

星野源のオールナイトニッポン』の特別企画で、昨年12月に放送され大反響を呼んだ、「源と隆のクリスマス!2時間ぶっとおしカラオケパーティー」が、今年も行われた。藤井隆をゲストに招き、カラオケで好きな歌を歌いながらトークをするという、リスナーも彼らと一緒にカラオケルームで盛り上がっているかのような雰囲気を味わえる、なんともゆるくて楽しい2時間だった。

なんだか真面目に語るのもおかしいけれど、カラオケの面白さは、その人の音楽の「裏」ルーツ的なものが垣間見れるところにあると思う。例えばふだんはゴリゴリのパンクが好きだとか言っている人が、カラオケでは「これ、いい歌なんですよ〜」とかなんとか照れくさそうに言いながら、急に千昌夫の“津軽平野”を歌い始めたりする。しかも、「実はこれほら、吉幾三の作詞・作曲なんですよ!」なんていう熱い解説も込みで、曲への思い入れを語ったりしながら。そういうカラオケが好きだ。

で、星野源と藤井隆という、ポップミュージックには並々ならぬこだわりを持つふたりのカラオケパーティーなのだから、その選曲がありきたりになるわけがない。昨年もなかなかにマニアックな選曲でリスナーを唸らせた藤井隆と、意外なセレクトでレアな歌を聴かせてくれた星野源。今年の選曲にも期待が高まる。「クリスマスソングを歌う」と、オープニングで宣言していたにもかかわらず、進行していくにつれ藤井はどんどんお酒が進み、結局は自分の歌いたい歌を歌って、そうそう、まさにカラオケパーティーってこんな感じ、という脱線具合をリアルに見せて(聴かせて)くれたのだった。

番組内でカラオケでフルコーラス歌われた曲は下記の通り。

・やしきたかじん/“やっぱ好きやねん”(星野源)
dream/“MUSIC IS MY THING”(藤井隆)
・中谷美紀/“STRANGE PARADISE”(藤井隆)
・WANDS/“もっと強く抱きしめたなら”(星野源)
・渡辺典子/“少年ケニヤ”(藤井隆)
・ちあきなおみ/“喝采”(藤井隆)
・遠藤京子/“雪が降るまえに”(藤井隆)
・星野源/“恋”(星野源)

この日は、放送前にドラマ『コウノドリ』の撮影があり、そこで絶叫シーンがあったため、やや喉の調子がよくないと言っていた星野だったが、その分、藤井のさすがの選曲が炸裂。星野も「SAKEROCKをやってた頃にライブでやってたりした曲」だという、“やっぱ好きやねん”をムードたっぷりに歌ったり、間奏中に「中学の頃に聴いてたんです。好きなんです」と言いながら、少しものまねを入れながら“もっと強く抱きしめたなら”を、結局はマジで歌ってしまったり。こういう当時のエピソードが出てくるのも、やっぱりカラオケというツールがあってこそ。ステージで歌うのとは違う、素の歌が聴けるという意味でもレア。

藤井が歌った“少年ケニヤ”は、1984年に公開された角川映画のアニメーションの主題歌だが、この曲は藤井が「いつもカラオケで博多華丸・大吉の大吉さんにリクエストされる曲なんです」と言って披露。星野も「素晴らしい曲」と聴き入っていた。自分が知らない素晴らしい歌に出会える場でもあるから、カラオケってやっぱり一緒に行く人次第で面白かったり、面白くなかったりするんだよなあ、とか思ったり。さらに藤井が歌う遠藤京子の“雪が降るまえに”は、 “少年ケニヤ”と同じく1984年にリリースされたヒット曲で、和モノの洗練されたグルーヴが心地好く、藤井隆が好む時代の音というものがなんとなく再確認できたり。この歌には星野源も「いい曲!」と絶賛。そして藤井は、「やっぱり僕、愛とか恋の歌をお届けしたかったんですよね」としみじみ。そこから「私は今、愛とか恋に迷ってうちに帰れなくなる歌を歌いました。だから星野さんにお願い。愛とか恋とかに迷わず帰ってこれる歌を歌ってください」と、アンサーソングをリクエスト。そしてラストに歌われたのは“恋”だった。

いろいろ心に刻まれた思い出の楽曲があって、なんだかそれが“恋”につながってるんだなあ、とか、今年一年の星野源の活動を思い出しながら聴いていた。完全にリラックスモードで本人がカラオケで歌う“恋”は、不思議な親密さで響いて、改めて最高のポップミュージックだなあと感じた。ちなみにこの曲、『2017年DAM年間ランキング』の1位だそう。素晴らしい。というわけで、放送はあっという間の2時間。また次回の開催を楽しみにしている。(杉浦美恵)
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