ビートルズからファンへのクリスマス・レコード。63年から69年まで、素顔が覗く7枚をご紹介
2017.12.24 12:00
今年もまた、クリスマス・シーズンがやってきた。12月15日にはザ・ビートルズの『クリスマス・レコード・ボックス』がリリースされ、これを聴きながらクリスマス気分を楽しんでいる人も少なくないはずだ。
時代を遡り1963年、デビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』をリリースした年に、ザ・ビートルズはファンクラブのメンバーのためにクリスマス・レコードを作り始めた。解散の前年の1969年までに7枚のレコードを作成し、メンバーが「ビートル・ピープル」と呼んでいた熱心なファンに毎年郵送していたという。バンドの解散と共にこの恒例行事が終わったあとには、メンバーそれぞれがソロでクリスマス・ソングをリリースしている。
本記事では、クリスマス・シーズンを大切にしていたビートルズがファンに宛てた7枚のクリスマス・レコードと、メンバー4人それぞれのクリスマス・ソングを順番に紹介していきたい。
特にファンクラブ用に作られたクリスマス・レコードには、デビュー後間もないバンドの作風が変化していくさまが鮮やかに反映されている。メンバーの多才さにも改めて驚かされる貴重な内容だ。
1963年 『The Beatles Christmas Record』
(10月17日収録@ アビー・ロード・スタジオ スタジオ2)
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1963年、デビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』をリリースした年にファンクラブでの配布のために作られた1枚。トニー・バーロウの発案をもとに作られたこの1枚をきっかけに、この後6枚のクリスマス・レコードが毎年作られることになった。
「ビートルマニア」という言葉も生まれイギリスでは社会現象を巻き起こすほどの人気を博していた当時のビートルズだが、この『The Beatles Christmas Record』では“Good King Wenceslas”を歌いつつメンバーそれぞれが活き活きと語る様子が収録されている。
1964年 『Another Beatles Christmas Record』
(10月26日収録@ アビー・ロード・スタジオ スタジオ2)
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1枚目に引き続き、アビー・ロード・スタジオのスタジオ2で収録された2枚目のクリスマス・レコードには、ポール、ジョン、ジョージ、リンゴの順にファンへのメッセージが収録されている。
ジョンの「僕たちがレコードを溶かす(melting)のを楽しんだのと同じくらい、みんなもレコードを聴くのを楽しんでくれていたらいいな!」というジョークに対し、他のメンバーが「いやいや、作る(Making)のをだろ!」とツッコミを入れるなど終始和気あいあいとした雰囲気で進んでいく本作。
リンゴやジョージのコメントの中ではデビュー後の生活の変化への驚きなども語られており、当時のビートルズの忙しさのほどが窺える内容となっている。
1965年 『The Beatles' Third Christmas Record』
(11月8日収録@ アビー・ロード・スタジオ スタジオ2)
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3枚目の『The Beatles' Third Christmas Record』は、映画『4人はアイドル(Help!)』が公開され『ラバーソウル』がリリースされた1965年の作品だ。
“Yesterday”のクリスマス風の替え歌から始まり、「クリスマスが近づいていることを忘れちゃいけないよ!」とのリンゴのコメントを幕開けにメンバーは終始ジョークを言い合っているが、「今年も誕生日やクリスマスのプレゼントやカードを送ってくれて本当にありがとう」と繰り返し語られているファンへの感謝のコメントが印象的だ。
1963年の『プリーズ・プリーズ・ミー』以来、この時までにすでに4枚のアルバムをリリースしているビートルズ。このクリスマス・レコードを収録した当時は、『ラバーソウル』の制作を始めて1週間ほどが経っていたそうだ。
『ヘルプ!4人はアイドル』(1965)トレイラー
1966年 『Pantomime: Everywhere It's Christmas』
(11月25日収録@ ディック・ジェイムス・ミュージック)
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1966年、『リボルバー』がリリースされたこの年のクリスマス・ソングは、これまでの3枚とは趣を異にしている。これまでの3枚のようなメンバーそれぞれのコメントや会話はなくなり、“Everywhere It's Christmas”という曲のピアノの弾き語りを軸にスキットが繰り広げられる。
翌年に発表される『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のコンセプト・アルバムとしてのアイディアも反映されているようで、興味深い内容となっている。
1967年『Christmas Time (Is Here Again)』
(11月28日収録@ アビー・ロード・スタジオ スタジオ3)
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ジョンとリンゴがデザインしたという『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットを彷彿とさせるアートワーク然り、音源自体も前年の『Pantomime: Everywhere It's Christmas』と同じくメンバーがコメディ・タッチのスキットを展開する内容となっている。
しかしスキットの途中に挿入される数々の音楽は前年よりもクリスマス色の強いものとなっており、5枚目にして初めてジョージ・マーティンも参加している。音源の最後にはメンバーとジョージ・マーティンからファンへの感謝のコメントも述べられている。
1968年 『The Beatles Sixth Christmas Record』
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“Ob-La-Di, Ob-La-Da”のイントロと共にリンゴの挨拶から始まる6枚目は、『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』がリリースされた1968年のものだ。
1968年といえばビートルズがアップル・コアを設立した年でもあるが、この年のクリスマス・レコードではこれまでの5枚とは違い、メンバーそれぞれが別々の場所でレコーディングを行ったという。
1969年 『The Beatles Seventh Christmas Record』
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最後のクリスマス・レコードとなった『The Beatles Seventh Christmas Record』でも、前年と同じくメンバーが集ってのレコーディングは叶わなかったようだ。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコの微笑ましい会話から始まる今回の音源では、他のメンバーのパートもあるものの大部分をジョンとヨーコが担当している。メンバー間の不和が大きくなっていた当時の状況が窺える内容となっている。
この翌年、1970年にポール・マッカートニーがビートルズからの脱退を発表。クリスマス・レコードの配布もこの7枚目で終了することとなった。