ちなみに同番組の2月11日の放送で、くるりの新曲“その線は水平線”が初オンエアされたのだが、その際岸田は吉岡里帆の印象について「最初お会いしたときに、この人昔から知ってるな、というくらいよく知っているような感じがした」とコメントを寄せていた。今回の対談を聴いてみると、確かに京都出身のふたりだからこそなのか、どこか会話以外のところでも意思の疎通をしているような感じがしたし、ほんわかとした空気が終始番組を包み込んでいるような感じもした。
対談はふたりの「よろしくお願いいたします~」という京都訛りの挨拶からスタート。吉岡は「やっと、やっとですよ!」とのっけからテンション高めで、長年対談を待ち望んでいたことを岸田に打ち明ける。彼は「僕、ちゃんとしたトークをしたことがないんで、今まで(笑)」とゆるく笑いつつ、吉岡の熱い気持ちをしっかりと受け止めていた。
そして改めてくるりの新曲“その線は水平線”がオンエアされると、吉岡は「たまらないですね!」とまず一声。続けて「水みたいですね。いつどんな時に体に浸透してきても、いつでも心地よく、いつでも濁りもなく入って来るという、その気持ちに毎回させられるんですけど」とくるりの音楽を語る。「水みたい」というのは、このバンドの音楽を言い表す絶妙な言葉だと思う。彼らの歌には、耳に入った瞬間に血液に乗って体中をゆったり流れるような、人懐っこさや親しみやすさを感じるからだ。もうこの一言で、吉岡里帆がいかにくるりの音楽を聴き込んでいて、かつ彼らのことを愛してやまないのかが十分に伝わってくる。
岸田が新曲の制作過程や影響を受けた楽曲(この日はゲーム『ドラゴンクエストIV』で使用されている、すぎやまこういちの“のどかな熱気球のたび”(演奏:東京都交響楽団)を紹介していた)を語った後、生活にクローズアップした話へ。この中では、岸田が世田谷神社(世田谷八幡宮)で“ばらの花”を作ったという思い出話をし、吉岡が「そうだ、私そこ行きました!」とその地を訪れていたことを告白したり、また家でよく料理を作るという岸田が、だしをとる際にかつお節をケチってしまうことに対し、吉岡が「ケチっちゃダメですよ! 私岸田さんのこと大好きですし、やることなすことほとんどのことを全部プラスに受け止められると思うんですけど、おだしだけは、かつお節たっぷりの方が絶対美味しいです!」と愛らしく諭すというシーンがあった。
……何気ない会話だが、吉岡のくるり愛の深さと、それを本人にストレートにぶつけられるピュアさが感じられて、思わずきゅんとしてしまう。そしてその言葉のひとつひとつに応える岸田の照れた笑い声も、なんだかいつも以上に温和でころころとしていて、彼にこんなに可愛らしい一面があったのかと正直驚いてしまうほどだった。京都人同士の和やかな会話が、それぞれの生来の人柄を垣間見させてくれたのだろうか。