ザ・ブリーダーズの新作『オール・ナーヴ』は、脂が乗ったバンドの「今」が息づいた渾身の一作である

  • ザ・ブリーダーズの新作『オール・ナーヴ』は、脂が乗ったバンドの「今」が息づいた渾身の一作である - Photo By Marisa Gesualdi

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3月2日にザ・ブリーダーズが実に10年ぶりとなるニュー・アルバム『オール・ナーヴ』をリリースした。

今作は1993年、まだグランジ/オルタナ・ブーム真っ只中にリリースされた2ndアルバム『ラスト・スプラッシュ』に参加したメンバーが集結していることでも話題だ。

だが、その全貌は熟成されたヘヴィーな音像とメンバーそれぞれの躍動感に満ちた演奏により「2018年版ザ・ブリーダーズの新作」として、バンドの入門盤、またこれまでのファンの期待にも応えたアルバムとしても機能する作品だ。

今作の制作のきっかけを説明すると、フロントマンである元ピクシーズのキム・ディール(Vo/G)は、実姉でメンバーのケリー・ディール(G)と『ラスト・スプラッシュ』のリリース20周年を記念した何かしらのお祝いをしないのか、という話を2012年にしたという。

結果、キムはジョゼフィン・ウィッグス(B)、ジム・マクファーソン(Dr)と連絡を取り合い、2013年に『ラスト・スプラッシュ』のアルバム再現ツアーをスタート。そしてツアー終盤の2014年頃には、今作にも収録されている“All Nerve”と“Skinhead #2”が完成していたという。そのツアーでも披露されていた“All Nerve”などを聴くと、確かにステージの映え方やバンド・アンサンブルの妙などが楽器の鳴りに反映されていることがわかる。


なお、今作はニルヴァーナ『イン・ユーテロ』など数々の名盤を手がけてきたスティーヴ・アルビニがプロデュースを担当。他にもバンドではないものの、そのサウンドからはザ・ブリーダーズの後継者たる資格を漂わせるコートニー・バーネットが参加しているのも注目だ。(彼女は“Howl at the Summit”にコーラス参加。キムとはプライベートでも交流があるようだ)

今作が「2018年版ザ・ブリーダーズの新作」としてふさわしい点のひとつに、アルバムのトータル・タイムが約33分とコンパクトにまとめられている点が挙げられるだろう。また、昨年先行リリースされた“Wait in the Car”の爽快なギターリフとドラミングからは、90年代の彼らとは違うオーラを纏った、パンキッシュなバンドの開放的な一面が存分に堪能できるはずだ。


そしてバウハウスからインスパイアされたという“MetaGoth”や、軽快なリズムとともにモダン・ロックの香りが混ぜ合わさった“Archangel’s Thunderbird”など、そこには前作から10年というインターバルを微塵も感じさせない、いまこの時、脂が乗ったザ・ブリーダーズのサウンドが各楽曲に息づいていることも、今作がフレッシュな作品だと思わせてくれる大切な要素だと思う。

このアルバムがザ・ブリーダーズとの初めての出会いとなるリスナーもきっといるはずだ。運の良いことに、今年は前述したコートニー・バーネットの新作もリリースされるし、昨年末からウルフ・アリス、ドリーム・ワイフといったオルタナ要素を全面に押し出したガールズ主体のバンドがロック・シーンにて活躍している。まさに今作を聴くには、今が最もふさわしいタイミングなのだ。

結成から20年以上が経過したベテラン、ザ・ブリーダーズの新作『オール・ナーヴ』は、そんな新しい時代のアーティストとともに、2018年を全力で駆け抜けていくバンドによる渾身の一作であることは間違いない。(小田淳治)

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