「あなた」に向けて歌い続けたSUPER BEAVERの軌跡、そして日本武道館公演に向けて

「あなた」に向けて歌い続けたSUPER BEAVERの軌跡、そして日本武道館公演に向けて
SUPER BEAVERが、4月30日にキャリア初の日本武道館公演を行う」というニュースを見た時、行きたい! 嬉しい!という自己欲求より先に、「あ、絶対にいいライブになるな」という確信が湧いた。それは単純に日本武道館という特別な場所でのライブだからという意味ではなく、「彼らが今、このタイミングで、この場を選んだのなら」という、バンドの歴史を踏まえて湧いてきた感情だった。

「自分たちの音楽を貫きたい」という意志を持ってメジャーからインディーズに転向し、さらに自主レーベルを設立。地に根を張るが如く活動を続け動員や会場の規模を着実に拡げている中で、今年3月に渋谷龍太(Vo)の体調不良による療養のためいくつかのライブがキャンセルされるという事態が発生しながらも4月には無事復帰。そんな紆余曲折ありながらもメンバーチェンジすることなく結成13年目を迎えた彼らが、今回初の日本武道館公演に臨む――ニュース記事や略歴では恐らくこのように書かれるのだろうし、そういった彼らの歩みは確かにドラマチックだ。けれどこれらの軌跡を振り返った時に私が感動したのは、ストーリーが織りなす美しさに対してではなく、彼らの曲が放つ説得力の所以をまざまざと思い知ったからだった。

SUPER BEAVERの楽曲は、《あなた》という一人称に対する向き合い方が驚くほど寛容で柔軟だ。上から諭すでも下からへつらうでもなく同じ目線で居てくれるその安心感を求めて音楽プレイヤーのスタートボタンを押した日が、これまで数え切れないほどある。言ってしまえば赤の他人であるこちらのセンチメンタルやネガティブさをまるごと受け止めてくれるそんな彼らの包容力に曲を聴くたびに感謝をするし、それは彼らがこれまでの道程の中で悲しみや失敗や苦節に直面した時、《あなた》に助けられたという何にも代えがたい経験があるからこそ伝えられる慈愛なのだろう。それ故《見つけてくれて ありがとう/受け止めてくれて ありがとう》(“ありがとう”)という穏やかで美しい想いの交差がSUPER BEAVERとファンの間に絶えずあって、彼らのライブにはだからこそ生まれる居心地の良さがある。

そして彼らは、紆余曲折と例えられる軌跡を辿りながらも誰彼の悲しみに共感しただ寄り添うのではなく、いつだって感謝と歓びを鳴らしてこちらの手を引いてくれるのだ。「痛かったね、辛かったね」で終わるのではなく「辛かったね。でもね、この先にはもっと素敵なことがあるんだよ」と丁寧に未来を提示し、私たちを導いてくれていることが素晴らしい。なんて温かい人達であり、なんて心強いのだろう!とつくづく思うし、こういう音楽を鳴らしてくれる人たちが多くの人に求められ、日本武道館という歴史ある会場をソールドアウトで迎えるということが、彼らの音楽に励まされ続ける身としてとても誇らしいのだ。

きっとあの4人は、間違いなく自分の足であのステージまで辿り着いたのに、それでも変わらずに「あなたのおかげだ」と真っ直ぐ伝えるのだろう。そんな情景を思い浮かべながら、こちらの想像を遥かに超えてくれるであろう4月30日の夜を指折り数えて待っている。(峯岸利恵)
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