関ジャニ∞『GR8EST』に刻まれた人間性丸出しの歴史とこれからについて

関ジャニ∞『GR8EST』に刻まれた人間性丸出しの歴史とこれからについて - 『GR8EST』通常盤『GR8EST』通常盤
関ジャニ∞にとって、『8EST』(2012)に続く2作目のベストアルバム『GR8EST』。2012年の“あおっぱな”から2017年の“応答セヨ”までの21曲のシングル曲を中心に構成された本作は、「シングルコレクション」と呼んだほうがより正確な作品かもしれない。シングルコレクションだけにメンバー出演のドラマや映画のタイアップ曲も多数で、ファンはもちろん世間一般にも広く知られた馴染みのヒット曲がずらっと並んだ様は壮観だ。つまり、非常に間口の広い作品であるのは間違いない。しかし同時に、この『GR8EST』に収録された彼らの直近約5年間の楽曲は、CDデビューから15年目となる関ジャニ∞のキャリアにおいても極めて先進的かつチャレンジングだった期間の記録でもある。

彼らの初のベスト盤『8EST』が、エイトがエイトらしいサウンドを確立した8年間の軌跡だったとしたら、この『GR8EST』はその「エイトらしさ」がいかに広範囲なサウンドやジャンルに応用・発展可能であるかを実践・実証していった攻めの5年間の軌跡である。例えばデビュー〜初期の関西レペゼン曲の数々や、コミカルでパワフル、お祭りノリなロックやディスコサウンドが際立っていた2000年代の楽曲と比較すると、本作収録曲のバラエティはどえらいものになっている。

実際、ここにはロック、スカ、バラッド、エレクトロ・ポップ、ファンク、ディスコ、オーケストラ、バロック……と、様々な曲調のナンバーがごった煮になっている。しかもエイトの場合、「ロック」と一言で言っても、そこには直情型のパンクやエモから、ミクスチャー系、歌謡曲風、メタルやフォーク・ロックまで含まれる。そのサウンドのバラエティと深度は明らかに彼らが「バンド」だからこそ徹底してこだわり、獲得しえたものだし、そんなサウンドのバラエティと深度がマニアックな追求には終わらず、ナンバーワンヒット常連のポップチューンとなっていったのは、彼らが「アイドル」としてとことん開かれた存在であったからだ。バンドとアイドルのハイブリッドとしての関ジャニ∞、その互助作用が究極に高められていった過程を、この『GR8EST』では辿ることができるのだ。

エイトは自分たちでも曲を書くが、同時に多くのアーティストたちから楽曲提供を受けてきたグループでもある。怒髪天の増子直純(“あおっぱな”)、SEKAI NO OWARIのSaoriとNakajin(“涙の答え”)、湘南乃風若旦那(“キング オブ 男!”)、宮藤官九郎銀杏BOYZ峯田和伸(“言ったじゃないか”)、レキシ(“侍唄(さむらいソング)”)、さだまさし(“奇跡の人”)、ポルノグラフィティの新藤晴一(“応答セヨ”)ら、本作にも錚々たるメンツが提供した楽曲が収録されている。しかも、エイトとこれらのアーティストたちのコラボは、エイトが楽曲提供者の作風を拝借してそこに乗っかったわけでも、楽曲提供者が自分たちの作風を抑えてエイトのキャラクターに合わせたわけでもない。どの曲も両者の間で互いの個性を高め合う方向で再構築されたもので、結果としてエイトにとっても楽曲提供者にとっても、自分たちの新しい可能性を見出す機会になっているのがすごいのだ。こういうセッション的なやり取りが可能なのも、エイト自身が音楽の作り手としての経験と自負を強く持っているからこそだろう。

セッションという意味では、新たにレコーディングされた“無責任ヒーロー”と“大阪ロマネスク”の2曲も注目だ。“無責任ヒーロー”は東京スカパラダイスオーケストラによるリアレンジで、エイトとスカパラのバンドコラボ曲となっている。この曲は何と言ってもミュージックビデオが素晴らしい。殺風景なスタジオでエイトとスカパラが時に向かい合い、時に横一列に入り混じって、バンドとバンドとして対峙し、互いの演奏でコミュニケーションをとり、笑顔でエールを送り合う様が本当に感動的なのだ。アイドルであることと等分の情熱でバンドをやり続けてきたエイトの歴史が、この数分の映像に結実していると言っていいはずだ。

一方の“大阪ロマネスク”は葉加瀬太郎とのコラボ曲。“大阪ロマネスク”は古くからファンに愛され、彼らとファンと一緒に育ってきた特別なナンバーだ。「御堂筋」、「梅田」、「難波」……と、彼らの原風景を辿る歌詞も含めて、常にエイトの根っこにあるナンバーであり、今回の新バージョンではよりメロウネスが際立つアレンジによって、彼らとファンの感慨をじんわりと、そしてエモーショナルに昇華する見事な1曲に仕上がっている。

コンセプト映像「HELLO! GR8EST BABY!!」(これまたエイトらしさが炸裂のぶっ飛び企画なのですが)や、DJ和によるノンストップミックスなど、このほかにも豪華特典盛りだくさんの『GR8EST』だが、彼らの出発点とこれまでに積み重ねてきた成果の両方を凝縮したこの“無責任ヒーロー”と“大阪ロマネスク”の新録が、今回のベスト盤としての最大の聴きどころになっているのは間違いない。

ちなみにこの新録“大阪ロマネスク”のミュージックビデオは、エイトが7人組として撮影した最後のミュージックビデオとなった。そう、『GR8EST』は関ジャニ∞の最新ベスト盤であると同時に、「7人のエイト」のラストアルバムでもあるのだ。今年4月に渋谷すばるの脱退が発表され、7月から始まる5大ドームツアー以降は渋谷をのぞく6人での活動が決まっている。

6人組となったエイトは、これからもちろん大きく変わっていくだろう。面白いほど性格もルックスも声質も音楽嗜好も異なる7人が、有機的な結びつきのもとでオンリーワンとしての関ジャニ∞を作り上げてきた歴史は、微調整や補てんで何事もなかったかのように続行できるものではない。そんな軽いものではない。だからこそ彼らは変わっていくだろうし、これから6人が再スクラムを組んで試行錯誤を続けていくその友情と覚悟にこそ、人間臭くリアルな関ジャニ∞というグループの魅力と底力があるのだと思う。そしてこれからの彼らの歩みには、7人で歩き、刻んできたこの『GR8EST』に代表される「地図」が、何よりの道標となるはずだ。(粉川しの)
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