THE ORAL CIGARETTESがReI projectで絶大な覚悟で届けたものについて改めて考える

THE ORAL CIGARETTESがReI projectで絶大な覚悟で届けたものについて改めて考える - 『Kisses and Kills』『Kisses and Kills』
6月13日にニューアルバム『Kisses and Kills』をリリースしたTHE ORAL CIGARETTES。収録曲は10曲だが、そこにはオーラルの新境地、挑戦――これからの未来を照らす、新しいオーラルの姿が詰まっている。

そして、同作の初回盤に付属するDVDには、今年2月15日に開催された初の大阪城ホールワンマン公演「唇ワンマンライブ 2018 WINTER『Diver In the BLACK Tour~ReI of Lights~』at大阪城ホール」から、ライブ映像9曲が収録されているほか、現在オーラルが実施しているReI projectのドキュメンタリー映像が収められている。

このReI projectのドキュメンタリー映像だが、ライブ映像9曲目、“ReI”の後に繋がるかたちで、約43分にわたって収められている。
「Documentary of ReI」は、冒頭、昨年11月1日にZepp Osaka Baysideで行われたツアー「Diver In the BLACK」初日にて初めて披露された“ReI”のライブ映像で、演奏する前に山中拓也(Vo・G)が、この曲が生まれた経緯を厳かに、しかし自身の言葉で柔らかく、丁寧に言葉を選んで、そしてありのままを話す姿が収められている。このライブから、ツアーで“ReI”を披露する度に話されていたのだろう、私自身、ツアー最終日の新木場STUDIO COAST公演で初めて聴いたが、同様なことを話していたと思う。それはテンプレだとか、そんな言葉で表せるものではなく、山中自身が、自分の想いを隠さず、正直に、しかし言葉を選んで、精一杯伝えたいという想いを込めたからこそ、どの会場でも変わらずに話してきたのだと思う。

私事になるが、東日本大震災の被災地には何度か足を運んでいる。被災直後、初めて石巻を訪れた時、戦争を体験したことはないが、本当に、まるで空襲で焼け野原になったかのような光景が広がっていて、「絶望」、「虚無」という言葉を体現しているようだった。海の近くにも行ったが、恐ろしいほど凪いでいるように見えた。あれだけ多くの命を飲み込んだとは思えないほどに。私はその時、海が憎らしくなったことを覚えている。
その2、3年後、津波の被害が酷かった閖上地区も訪れたが、まだ生徒の笑い声が聞こえてきそうな、がらんどうになった校舎の入り口、下駄箱がそのままの姿を見て、そこにあった当たり前の日常がぽっかりと消えてしまった、という事実に、身動きがとれなくなった。

“ReI”を、山中のMCを踏まえて初めて聴いた時に、被災地を訪れた時の記憶が、走馬灯のようにぶわっと脳内を駆け巡ったのを覚えている。山中は被災地を初めて訪れた時に気持ち悪くなってしまったと言っていた。私は逆で、何も考えられなくなってしまった。しかしこの曲を聴いて、何かがすとんと落ちた気がした。

この「Documentary of ReI」では、“ReI”を制作するにあたっての、メンバーの想いがそれぞれ語られている。
また、曲名が“ReI”になった理由も、山中がメンバーに対して熱弁しているさまも収められているが、それも綺麗事ではなく、確かな希望を持った瞳で訴えている姿がとても印象的だ。ひとつの単語に、たくさんの意味を持つこの言葉を、曲名に選んだ。その理由を知ると、楽曲の持つ意味と、込められたたくさんの想いが改めて輝きを増すように感じる。

ReI projectとは、「“ReI”という楽曲をいかに多くの人に届けるか」(あきらかにあきら/B・Cho)、ということだという。「曲が持てる力を、いかにたくさんの人に届けるか、被災地だけではなく、これからの未来に生きる人にも残していくための場所」だと中西雅哉(Dr)は話す。
――「どうかこの楽曲が自分たちのためだけでなく、誰かのための楽曲であり続けてほしい」(山中)


この「Documentary of ReI」を観て、一貫して感じるのは、オーラル全員の「覚悟」だ。
被災地に対して「目を背けたかった」、「後ろめたかった」と話しつつ、「だからこそ中途半端なことができない」という、強い覚悟。「目を背けたかった」なんて、人目を気にしたらきっと言えない言葉だ。でも彼らは、正直に話す。
先輩のバンドマンたちや、いろいろな人たちが活動を起こしている中、きっと自分たちも「何かしないと」という思いはずっとあったのだろう。しかし、体験してもいない自分たちに何ができるか、被災地に足を踏み入れることすらできていない自分たちに……さらに、まだそこまで多くの人たちに認識されていない自分たちが何をしたって届かないのではないか……だから「目を背けたかった」し「後ろめたかった」んだろう。
しかし、今はそれをはっきり口に出せるほど、全てを受け入れたオーラルの姿がそこにはある。汚い自分すら見せる覚悟、全てをさらけ出す覚悟、だからこそ、“ReI”という曲を、自信を持って届ける覚悟――。
《一瞬で亡くなった日も/消えてしまった周りのものも》
《天変地異なんて起こるわけがない/そんな気もしたあの日はどこへと》
その覚悟がなければ、ここまでどストレートな歌詞が書けるだろうか。オブラートに包まず、一番鋭く、だけど、一番届く言葉。そして、この歌の意味でもある。

オーラルがその絶大な覚悟をもって届けるから、ライブ後のファンのコメント映像では、しっかりとその想いが伝わっていることがわかる。鈴木重伸(G)は「曲に対する不安は全くない」と話していた。まさにその通りだった。

私は以前「米津玄師“Lemon”とオーラル“ReI”は、大切な人を失った人全てに温かな光を当てる曲」というコラムで、以下のように書いた。

「大切な人を亡くす」ということは、原因が病気だろうが事故だろうが、天災だろうが、失った側としては大切な人を失ってしまったことに変わりはない。原因の大小はなく、「失った」という事実だけが残るのだ。そして、その人と過ごした大切な日々を思い返すのだ。


山中が話した、ReI projectの目的である「どうかこの楽曲が自分たちのためだけでなく、誰かのための楽曲であり続けてほしい」という言葉が、これからもこのプロジェクトを生き続けさせていくだろう。
先日終了したアーティストとのカップリングツアー「Piggybacking Together」もそうだが、オーラルは、自分たちだけでなく、さまざまな方面で自分たちの想いを伝えようと活動している。それは個人での活動も含め、すべてこれからのTHE ORAL CIGARETTESというバンドの糧となるだろう。そして、今、それが結集したものが、今作『Kisses and Kills』なのだ。

ReI projectは今後、「PhaseXX」が予定されている。
“ReI”を1人でも多くの人に届けるため、映像の終盤でも語っていたが、自分たちを知らなくても“ReI”という楽曲を知ってもらうため、オーラルは奔走し、そのために信念を貫いて殻を破り続け、闇の中から光を目指し、進み続けていくのだと思う。(中川志織)
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