星野源&宮野真守の『ANN』には美しい「共感」が溢れていた

話題にするには少し時間が経ってしまった感はあるけれど、『星野源のオールナイトニッポン』、ゲストに宮野真守を招いて放送した6月12日回は、ふたりのエンターテインメント性が炸裂した、「正しい深夜ラジオ」だった。もちろん、星野源がひとりで進行する回でも、その「深夜ラジオ」の空気はとても大切にされているのだけれど、お互いにシンパシーを感じ合うゲストと2時間ともに進行するということで、そこで生まれるグルーヴは、いつにも増して大きくあたたかだった。

星野源と宮野真守の、そもそもの関係性から整理しておきたい。宮野真守は声優としての十分なキャリアと実力を誇り、さらに歌手としての活動、またバラエティ番組への出演など、マルチにお茶の間を楽しませる非常に多才な人である。星野源は、宮野が『シュタインズ・ゲート』の岡部倫太郎役を演じた頃から彼の活動に注目していて、『AERA』の連載で対談をオファーしたのがふたりの最初の出会い。その後、『おげんさんといっしょ』でのねずみ役、また、昨年の星野の全国アリーナツアー「Continues」でのボイスドラマで、宮野が重要な「J-POP」役を務めるなど、星野は宮野の仕事に対してリスペクトの気持ちを隠さない。今や星野のライブには欠かせない「ニセ明」という存在は、実は宮野真守が自身のライブで登場させている「雅マモル」にインスパイアされて生まれた、というのはわりと有名な話だ。そんな経緯もあり、もちろん宮野も星野の活動には大いに刺激を受けている。

というわけで、星野の『ANN』にゲストとして宮野が出演するのも、実は今回が2度目。だからこそ息もピッタリな、完璧な「深夜放送」が実現したのだと思う。星野の『ANN』では定番の「夜の国性調査」(リスナーのみんなの思い出に残る性体験を朗読するコーナー)で、宮野が極上の声で情感たっぷりに朗読したり、これまたおなじみ「豚野郎!」(リスナーの懺悔に罵倒の言葉を浴びせるコーナー)でも、宮野は惜しげも無く素晴らしい声を披露。いつものエロコーナーがなんだか妙に贅沢だったりするのも、この日ならではだった。そのエンタメ性に振り切れる、ふたりの温度感というか波長がものすごくしっくりきているのを、放送を聴きながらずっと感じていたのだけれど、この日ふたりがお互いを褒め合うトークの流れで、その良い波長の理由がちょっと見えてきたので紹介しておきたい。パッと聴いただけでは、お互いがフザケながら褒め殺しをし合うという面白い構図にしか聴こえなかったかもしれないけれど、ここけっこう重要なことを言っていたので。

まず、星野は宮野に以前「世が世なら、あなたは『笑っていいとも!』のレギュラーになってる人だから」と真剣に語ったという。そして今バラエティ番組で輝いている宮野を見て、「培ったスキルの発揮の仕方が、観ていて気持ちいい」と評した。これはやはり、星野源が自分自身の活動の中でも、非常に大切にしてることなんじゃないかと思うのだ。様々な分野で仕事をして、そこで得たものがその分野にだけフィードバックされるのならマルチに活躍する意味などない、というか、声優で得たスキル、演技で得た経験、それらが音楽活動やタレントとしての存在感につながらなければ(もちろん逆も然り)面白くないじゃないか、と。宮野は星野を評して「星野さんは他を尊重してそうやって接していくからこそ、周りからも信頼されるし、愛される」と語った。そして「自分をそんなふうに見てもらえてることがまず、大リスペクト」とも。このやりとりに、強烈な「共感」が滲んでいるのがわかるだろうか。照れながらの、思わず爆笑しながらのトークだったけれど、最後に星野は「でもこれ、俺もだけど、わりとマジな話だよね?」と宮野に問いかけ、宮野も「マジな話」と答えていて、やはりこのトークパートはお互いの表現活動へのスタンスを確認し合う、大事なポイントだったんだなと思った。

もちろんそれを真剣に語り合ってしまうのは無粋だから、あくまで「褒め殺し合い」の体で笑いに変えていったのも、ふたりの間に暗黙の共感があったからこそ。この日の放送で、ちょっと「おお!」とエモくなったのは私もこの一瞬だけで、あとはひたすら最高に楽しい「深夜ラジオ」だった。「雅マモル」と星野源のやりとりも最高だったし。とにかくあっという間の2時間。またこのふたりでの放送を楽しみにしている。(杉浦美恵)
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