新作『Kisses and Kills』は、オーラルが人間の中に渦巻くさまざまな感情との向き合い方を明確に定義したアルバムだと思ったが、その作品が引鉄になって、何かタガが外れたように、獰猛で奔放なロックショウとなっている。
愛情が深い妬みや憎悪にすり替わることがあれば、痛みや苦しみの先に喜びを見つけることもある。人が胸の中に棲まわせた心の怪物は、解放される場が必要なのだということ。あるときは優しく温かな、またあるときは異形の爆音の中で、音楽の根源に触れるような瞬間が何度もあった。
その曲がそんなところに配置されるのかよ、という驚きも引っ括めて、明確な意図が見えてくるセットリストもおもしろい。今後の各地公演を楽しみにしている方は、期待してもし過ぎることはないので、ぜひ心の怪物を解き放つつもりで、思いっ切り臨んでいただきたい。(小池宏和)