スピッツの『なつぞら』主題歌“優しいあの子”とオールアニメのOP映像で毎朝が温かく始まること

2019年度前期のNHK連続テレビ小説『なつぞら』。物語は終戦の翌年、1946年の初夏からスタートする。主人公・奥原なつが子どもながらに知恵を絞り、命からがら生き延びようとする様子を観ていて、戦時中に子どもだけで生きていくとなると、子どもらしさを持つことすら許されない過酷な状況なのだとあらためて痛感し、苦虫を嚙み潰したような気持ちになった。

そんなヘヴィな物語の序盤に鮮やかさを加えるのが、なつが動物たちや大自然と戯れるオールアニメーションのオープニング映像と、スピッツが手掛ける同ドラマの主題歌“優しいあの子”だ。映像は『アルプスの少女ハイジ』や『あらいぐまラスカル』に近い懐かしいタッチでありながらも、現代的な色彩美で彩られている。スピッツの今もなお色褪せない豊潤なポップネス、やわらかいギターのイントロ、思わずスキップを踏みたくなるような軽快なサウンドとの親和性も高い。

隅々まで聴き心地のいい音に乗る歌詞に耳をそばだててみると、まず飛び込んでくるのは冬の厳しさや孤独の描写だ。だが「めげずに歩いたその先に 知らなかった世界」が広がってから、北の大地特有の涼しげで晴れやかな夏空を彷彿とさせる言葉へとつながる。「優しいあの子にも教えたい」という願望を告げたあとの穏やかなハミングは、言葉にならない喜びが感じられた。

だがラストに再び「砕かれて」や「消えかけた火」など、シビアな言葉が並んでいた。大自然ののどかさや素晴らしさを描くだけではなく、その陰の部分を盛り込みリアリティを持たすところもスピッツらしい。十勝の厳しい冬と、それを越えて訪れる夏の澄んだ大空や緑がきらめく野原までを内包した“優しいあの子”。戦後の世で逞しく生き抜き、そのなかで出会った夢を実直に追う主人公・なつを、最終回まで美しく照らすことは間違いない。(沖さやこ)
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