今週の一枚 プリンス『レイヴ完全盤』

今週の一枚 プリンス『レイヴ完全盤』

プリンス
『レイヴ完全盤』
発売中


プリンス(シンボル・マーク)は、1999年6月にリリースされ特大のヒットとなりサンタナの大復活を告げた『スーパーナチュラル』に刺激を受けて、自分のアルバムもヒットさせたがっていた。そこで『スーパーナチュラル』のレーベルであるアリスタと合意。サンタナ同様、豪華ゲストを配した態勢になったのは、同社の社長クライヴ・デイヴィスの政治力が大きいだろう。プリンス(シンボル・マーク)は80年代のお気に入りのプロデューサーを起用すると発表して注目されたが、蓋を開けたらそれは「プリンス」だった。つまりそれは80年代のプリンス・サウンドを1999年という時代状況の中で再構築することであった。80年代の絶頂期からみればいろいろありすぎた90年代の迷走状況を変えたかったのだろうと推測する。結果、本作は、聴き手に対して大きく開かれた風通しのいいポップ・ソング集に仕上がっているのだ。


実にプリンスらしいヘヴィ・ファンクのタイトル曲に始まり、チャック・Dをフィーチュアした“アンディスピューテッド〜”、激甘のソウル・バラード“ザ・グレイテスト・ロマンス・エヴァー・ソールド”、イヴをフィーチュアしたポップ・ファンク“ホット・ウィズ・ユー〜”、グウェン・ステファニーとデュエットを聴かせるロック色濃い“ソー・ファー、ソー・プリーズド〜”、シェリル・クロウとの80年代色濃い“ベイビー・ノウ〜”、アーニー・ディフランコとの絶品バラード“アイ・ラヴ・ユー、バット・アイ・ドント・トラスト・ユー・エニモア〜”と、ゲストの使い所もツボを心得ていて、楽曲のバラエティにも富む。なかでも本作でのプリンス(シンボル・マーク)の開かれた姿勢を象徴するのがシェリル・クロウ96年のヒットをカバーした“エヴリ・デイ・イズ・ア・ワインディング・ロード”だろう。アルバムのベストは、当時は隠しトラックだった“プリティーマン”で、メイシオ・パーカーをフィーチュアしたジャム・セッションっぽいジャズ・ファンク。こういう曲をやる時のプリンス(シンボル・マーク)は実にイキイキしている。


結果的に本作は全米チャート18位と平凡なセールスに終わり、アリスタとのコラボも本アルバム限りで終わった。だがここで聴ける自由で開放的な雰囲気は、確実に2000年代以降に繋がっていくのである。

なお今回リリースされる『完全盤』には、2001年にNPGからリリースされたリミックス・アルバムと、1999年ペイズリー・パークでのライブを収録した映像(2000年発売)が同梱される。レニー・クラヴィッツやジョージ・クリントン、ザ・タイムがゲスト参加したライブ映像は最高に楽しめる。本作のツアーは行われなかっただけに貴重な記録だ。 (小野島大)

※註:文中の「プリンス(シンボル・マーク)」は正式にはラヴ・シンボル表記となります。
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