ゴールデンボンバーの「紅白に出られないとわかった」に始まり『もう紅白に出してくれない』で終わった平成ラストイヤー~令和元年を振り返る

ゴールデンボンバーの「紅白に出られないとわかった」に始まり『もう紅白に出してくれない』で終わった平成ラストイヤー~令和元年を振り返る
豊洲PITで開催された初のカウントダウンライブ、その名も「ゴールデンボンバー初!カウントダウンワンマンライブ~紅白に出られないとわかった~」で幕を開けたゴールデンボンバーの2019年。2012年から4年連続同じ曲(ご存じ“女々しくて”)で『NHK紅白歌合戦』出場という快挙のさらに先、今度は出場していないことすらネタにしてしまうなんて、彼らにしかできない。
そんな大自虐で年を開けたゴールデンボンバーの2019年を振り返ってみたいと思う。


●初のドラマ主題歌“ガガガガガガガ”を書き下ろし

2月にリリースされたシングル曲“ガガガガガガガ”は、NHK総合ドラマ10『トクサツガガガ』の主題歌に書き下ろされた。ゴールデンボンバーの武器のひとつが、ライブの定番曲“†ザ・V系っぽい曲†”のように、「○○っぽい」を自分たち色で再現するパロディソング。“ガガガガガガガ”は、まさに往年の特撮ヒーローソングにありそうな展開を踏襲し、思わず拳を握って熱唱したくなる1曲だ(MVでは、実際メンバーが「ゴールデンボンジャー」なるヒーローに扮している)。そしてもうひとつの武器が、ファン目線に立った歌詞。これが、ファンの共感を得るための――といったレベルではないのは、鬼龍院翔(Vo-karu)自身が、どれだけヒット曲を重ねて、大きなステージに立っても、エンドユーザーの視点を忘れられないがゆえのリアルなのだろう。特撮ヒーローオタクの悲喜こもごもをコメディタッチに描いたドラマに合わせ、《昨日疲れ果てて死にそうなとき助けてくれたのは/誰にも理解されない御趣味で》、《ねぇ奪わないで、怒らないで、仕事は休んでないから》と、切実な心情を描いている。どんなジャンルでも、趣味を持つ人なら間違いなく頷いてしまうはず。


●新元号発表のわずか2時間後に新曲“令和”を発表

平成が終わり、新時代「令和」スタートという大事件を、流行に敏感なゴールデンボンバーが逃すわけがない。なんと新元号発表の2時間後に新曲“令和”を完成させ、MVを公開、同日に配信まで行ったのだ。ただサプライズを仕込むだけではなく、当日の楽曲制作の様子をLINE LIVEとフジテレビで生中継してドキュメンタリーとしても楽しませる徹底ぶり。発表後もさまざまなメディアで取り上げられ、今作は、「第61回 日本レコード大賞」の企画賞を受賞することになる。あえて平成を彷彿させるユーロビート風の楽曲、ど派手な晴れ着で踊るMVで目を引きながら、《この時を生き抜いた自信がないから/次は変えよう 僕を変えよう》、《令和 変わる世界に/僕は何を残すだろう?》と自問自答を刻み込んでいるところに注目。世間の流行や盛り上がりに便乗しながらも、それを客観的に見つめる、どこか冷静な目線こそ、ゴールデンボンバーの神髄だ。


●YOSHIKI、GLAY、LUNA SEAというレジェンドとの共演

どれだけ国民的な存在になろうと、エアーバンドだろうと、ゴールデンボンバーのルーツと軸はやはりヴィジュアル系シーンにある。冒頭にあげた“†ザ・V系っぽい曲†”や、“毒グモ女(萌え燃え編)”、10月に配信リリースされた“首が痛い”(コテコテのヴィジュアル系バンドに扮したMVは必見!)など、ヴィジュアル系シーンやカルチャーをモチーフにした楽曲も多くある。大事なのは、そこにしっかりと愛情とリスペクトが溢れていること。だからシーンのファンはもちろん、アーティストたちからも愛されるのだ。4月に開催された「ニコニコ超会議2019」内の「超プレミアムライブ GLAY×ゴールデンボンバー in 超音楽祭2019」では、鬼龍院が特に青春時代に聴いていたというGLAYとツーマンで共演。当日、ゴールデンボンバーは全員それぞれがGLAYのメンバーの完全コスプレで挑み、最後には“女々しくて”のセッションが実現した。また、10月の「テレビ朝日ドリームフェスティバル2019」では、そんなGLAYに加えてLUNA SEAYOSHIKIとも同じステージに立ち、セッションでは、今度は歴代YOSHIKIのハイクオリティなコスプレを披露。怒られそうなギリギリを攻めながらも、絶対に妥協しない情熱で突っ走って最後には大先輩にも認められる、そのさじ加減が完璧なのである。


●地方民のための全国ツアー&無人島ライブ開催

定番の全国ツアーも、普通では終わらない彼ら。4月の群馬を皮切りに、23都市を回ったのが、「地方民について本気出して考えてみた~4年以上行ってない県ツアー~」だ。都心のライブになかなか来られないファンのために地方だけを回る、というだけでも話題性がある中、極めつきが11月16日の「特別追加地方無観客ライブ」と銘打たれた公演。無人島の沖ノ島から生配信限定ライブを開催したのだ。元を辿れば、2018年9月30日のX JAPANのライブが台風で中止になった際、急遽無観客のままライブを敢行、その映像が生配信されたことをパロディした企画――なのだが、それをなぜか無人島でやってしまう企画力に脱帽だ。企画とはいえパフォーマンスは全力投球で、MCも、喜矢武豊(Gita-)や樽美酒研二(Doramu)の体を張ったネタもいつも通りフルスイング。さらに、アンコール後は珍しく生演奏(!)によるアコースティックライブも挟んで、全13曲を披露した。無茶な企画もすべて、ファンをもっと驚かせて楽しませ続けたいからこそ。愛するファンがいる限り、ゴールデンボンバーのアイデアは枯れることはない。

●新アルバム『もう紅白に出してくれない』リリースを『紅白』出演者発表と同時に告知

1年の締めくくりとして、12月28日にリリースされたのが、4枚目のオリジナルアルバム『もう紅白に出してくれない』。なのだが、もちろんただおもしろいタイトルのアルバムを出す、だけではない。『第70回NHK紅白歌合戦』の出場者が発表された11月14日に、ニュースサイトを模した特設ページを作って発売を告知。同時に解禁された新しいアーティスト写真は、記者会見に出られそうな白い衣装で膝を抱えた4人という作り込みよう。「紅白に出られないとわかった」と言って新年を迎えた1年前を壮大なフリにして、もはや「出られないほうがおもしろいのでは」と思わせてしまう見事なポジティブ変換をキメてみせた。何につまずいても、失敗しても、その状況を全力で楽しんだもの勝ち。何かにつけて揚げ足を取られがちな時代だけれども、誰かを恨んだり傷つけたりするより、自分自身が楽しく遊んでしまえばいい。それがゴールデンボンバーのエンターテインメントであることを、数々の自虐と挑戦の果てに強く証明した2019年だった。
アルバムには、シングル曲のほか、シティポップに挑戦したパロディソングの真骨頂“LINEのBGMにしてるとモテる曲”、重い片思いの辛さを詰め込んだ“振動”や“ぺしみずむ”、ライブに来るファンの声を代弁した“かまってちょうだい///”、“暴れ曲”など、ちょっとイタい自分もつまらない日常も、まるごとすくい上げてポジティブな笑いと感動に変えてくれる全16曲(おまけトラック含む)が詰まっている。そして、今作をひっさげて、2020年3月から「ゴールデンボンバー全国ツアー2020」が開催される。これから先、どんなアイデアで楽しませてくれるのか、ますます期待してほしい。彼らはどんな時もリスナーのために、いつでも真剣勝負で、きっとその期待を上回ってくれるはずだ。(後藤寛子)

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