庄村聡泰勇退に寄せて――[Alexandros]はあのドラムと共に歩んできた

庄村聡泰勇退に寄せて――[Alexandros]はあのドラムと共に歩んできた
[Alexandros]の庄村聡泰(Dr)がバンドを勇退することが先日発表された。庄村は、2019年6月から局所性ジストニアにより、ライブ活動を休止していたところ。医師と相談の上、可能な範囲で活動を行っていく予定だったが、活動を継続していくことが困難な状況が続いたため、本人の意思を尊重し、今年5月にリリース予定のベストアルバムを最後にバンドを離れることとなった。バンドのオフィシャルホームページにはメンバー4人からのコメントが掲載されている。詳細はそちらを参照していただきたい。

庄村は、前任ドラマーの脱退後、1stアルバム『Where’s My Potato?』のツアーにサポートメンバーとして帯同。ツアー終了後の2010年4月、バンドに正式加入した。当初はやや周囲からの風当たりが強かったが、黙々とドラムに向かい、愛される存在になっていったとのこと。

ドレッドヘアにエッジの効いたファッション、異様に高い位置にセッティングされたクラッシュシンバルが象徴するように、庄村に対して派手で奇抜なドラマーというイメージを抱いている人も多いかもしれない。そして、多くの人が連想するであろう彼のドラマーとしての一つの個性が手数の多さである。“Famous Day”を初めて聴いた時はその無双っぷりに腰を抜かしたものだ。7拍子のバラード“NEW WALL”でのアプローチも印象深い。

そんななか、“Famous Day”でも“NEW WALL”でも他のどの曲でも、メロディの流れに則したプレイをしている点が特徴的だった。必殺技みたいにキメたくなる箇所でもそうはせず、フレーズの連なりで線を描き、曲をちゃんと流れさせている。点の連続で喝采を浴びるタイプのドラマーもいるが、庄村に関してはそうではない。川上洋平(Vo・G)の書くメロディに対する絶対的な信頼が窺える。

さらに、手数が多くともそれぞれの音符の粒立ちが良く、各音をはっきり均等に鳴らすことのできる個性についても特筆しておきたい。例えば“Mosquito Bite”や“KABUTO”のグルーヴは別のドラマーだったら全く違うものになっていただろう。さらに“city”や“Waitress, Waitress!”、“Starrrrrrr”をはじめとした多くの曲において、休符の拍感をも聴き手にしっかり感じさせるようなドラムを聴かせてくれる。

そんな庄村のプレイスタイルは、バンドの進化に伴い、ゆるやかに変化し続けている。

「(メンバーが)羽ばたける道を作ると、羽ばたいてった人たちが音楽でお客さんに幸せのシャワーを降らすわけで。その幸せのシャワーを受けるお客さんが土だとすると、その土からいかに花が咲くかっていうのが、全部、演者がどう飛んで行くかに関わってくる。っていうことはやっぱ、大きな会場になればなるほど、心臓部はやっぱりここだよ、このコックピットだよなって思いますし」(庄村聡泰)

とは、『ROCKIN'ON JAPAN』2018年12月号に掲載されたインタビューでの発言。自分自身もステージに立つ人であるにもかかわらず、羽ばたいていく側の役割ではないと認識しているのが興味深い。一歩引いたところからメンバーのことを俯瞰し、バンドにとって気持ちのよいところへ向かうよう、彼はバンドを「操縦」する感覚で演奏していたのかもしれない。枠に囚われないスタイルを支えていたのは、「自分こんなこともできます」をお披露目したいというエゴではなく、メンバーからのオーダーに応えられる存在でありたいという意識なのかもしれない。近年ではこれまでの逆を行く「音を間引く」方法でサウンドのスケールアップに貢献する試みも見られ、特にアルバム『Sleepless in Brooklyn』(2018年11月)を境に次のフェーズに突入した印象があった。だからこそ、今後の彼のプレイ、[Alexandros]の4人で鳴らす音楽が楽しみだったわけだが――。

庄村がジストニアになったのは誰のせいでもない。誰のせいでもないからこそ、彼からドラムを奪うな、[Alexandros]以外の場所へ連れて行ってしまうなという宛ての無い感情を抱いてしまうし、悲しくないと言ったらそれは嘘になる。しかし、今回の件が発表された時の本人のコメントを読んだらもう何も言えなくなってしまった。ファンの不安を拭いつつ、自分の現状・心境を詳らかに伝えていく丁寧な文体には、(プレイスタイルからも読み取れるような)庄村の誠実な人柄が表れているように思う。メンバー曰く、いやいや、実は毒がある人なんだぞ、とのことだが、そう言い合える関係性に4人の絆を感じるものだ。あと3ヶ月、4人揃った[Alexandros]の活動を最後まで見届けたい。(蜂須賀ちなみ)
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