『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』から浮かび上がるサンボマスターと12組の「ナカマ」たちの深い絆について

『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』から浮かび上がるサンボマスターと12組の「ナカマ」たちの深い絆について - 『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』
結成20周年を迎える今年、「サンボマスター感謝祭」という華やかなタイトルの下、様々な動きが発表されている。その内のひとつが、トリビュートアルバム『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』だ。参加している12組が発表された時点で、ワクワクした人がたくさんいると思うが、その期待に完璧に応えるはずの作品となった。

トリビュートアルバムは、愛情が様々な形で滲み出るのが、何と言っても楽しい。本作でまず注目させられるのは、「原曲がかっこよくて堪らないから、同業者として真正面から向き合いました」という印象のものになっているカバーだ。SUPER BEAVER“ロックンロール イズ ノットデッド”、10-FEET“さよならベイビー”、My Hair is Bad“ラブソング”は、百戦錬磨のライブバンドとして真剣勝負を挑むかのような姿が迫ってくる。奥田民生“そのぬくもりに用がある”も、先輩ミュージシャンとしての貫禄に満ちた極上のロックサウンドだ。レコーディング現場で各々が噛み締めたはずの演奏、歌唱の喜びも伝わってくるが、この空気感はサンボマスターのものと完全に地続き。聴いていると、無条件でワクワクできる。

原曲とはまた一味異なる形で再構築するのも、カバーの醍醐味のひとつ。このアプローチに関しては、次の3曲がとても刺激的なことになっている。サンボマスターに添加されるなんて想像したこともなかったサイバーなエッセンスが、驚くほどバッチリとハマっているFear, and Loathing in Las Vegas“世界はそれを愛と呼ぶんだぜ”。原曲の印象を劇画とするならば、精緻に構築された音像が、油彩画のような優美さを漂わせているIchiro Yamaguchi+Setsuya Kurotaki“美しき人間の日々”。雄大に高鳴っていくバンドサウンドと、豊かに香るオーガニックな風味が安らぎを誘うMONGOL800“青春狂騒曲”――かっこいいと同時に、新鮮なスパイスも利かせた仕上がりになっている。

サンボマスターとは異なる歌の編成が活かされたものも、本作には収録されている。瑞々しいサウンドを躍動させつつ、メンバーたちの多彩な歌声によって力強いメッセージを明るく浮き彫りにしているBiSH“できっこないを やらなくちゃ”。原曲の持っている疾走感を素直に活かしながら、男女ボーカルのハーモニーを絶妙に響かせているヤバイTシャツ屋さん“光のロック”。とてもラウドなのに、ほのぼのとしたムードも漂わせてしまうという独自の持ち味を発揮している打首獄門同好会“世界をかえさせておくれよ”――この3曲のカバーも、とても楽しい。“世界をかえさせておくれよ”に関しては、「ラブソングがないバンド」というような紹介のされ方をされることもある打首にとって初のラブソングという捉え方もできるのかもしれない。

「取り組んだミュージシャンが、どういう点をリスペクトしているのか?」も、カバー曲には如実に表れる。感情を生々しく叩きつける歌唱法とサウンドでゾクゾクと痺れさせてくれる銀杏BOYZ みねたかずのV“夜汽車でやってきたアイツ”。ピアノを主軸としたアレンジによって、原曲が元々持っている抒情性を鮮やかに捉えた岡崎体育“二人ぼっちの世界”――この2曲は、彼らがサンボマスターに惹かれている理由がストレートに示されているのを感じる。サンボマスターのファンからは、「そうなんだよ! こういうところが自分も好きなんだ! わかってくれて嬉しい!」というような熱い反応が寄せられるのではないだろうか。

本作に収録されている12曲は、サンボマスターのことをよく知らない層にとってもかなり魅力的だと思う。代表曲がかなり網羅されているので、これをきっかけとして原曲を聴けば、すっかりハマってしまうだろう。そして、原曲とカバーをじっくり聴き比べるのも絶対に楽しいのでおすすめしておきたい。カバー曲のアレンジには、工夫、発想力、遊び心が深く刻まれているし、そこには参加している各々のかけがえのない個性も凝縮されている。贔屓にしている参加アーティストたちに惚れ直すこともできるのが、『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』だ。(田中大)
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