ACIDMANが約20年、変わらず貫き続けてきたことがくれる勇気

ACIDMANが約20年、変わらず貫き続けてきたことがくれる勇気
3月11日にACIDMANがYouTube Live/ファニコンにて配信した「生配信ドキュメントライブ」を、この記事を読んでいる方の多くがご覧になったことと思う。
東日本大震災の後、毎年3月11日にACIDMANが福島で行ってきたワンマン「ACIDMAN LIVE in FUKUSHIMA」を、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、福島のライブハウスからカメラ1台でのドキュメント形式での無観客配信ライブとして敢行。
ライブ中にはトーキョー・タナカ(MAN WITH A MISSION/Vo)も乱入するなど、ライブならではの熱量を間近で感じられる激演。その中でもひときわ際立っていたのは何より、そのソリッドなロックの強度と深度そのものによって道を切り開いてきたACIDMANの/大木伸夫(Vo・G)の在り方だった。

「今日の日が最後の1日だったとしても、最高の1日だったと言えるように、毎日毎日、日々命に感謝して、この宇宙に感謝して、かけがえのない、二度と戻ってこない1分1秒を最高のものにできるようにしていきたいと思います」

生配信ライブ中、“世界が終わる夜”の前に語られた大木の言葉は決してこの状況ゆえのものではなく、これまでライブのステージでもインタビューの場でも繰り返し語られてきたものだし、それはそのまま彼らの音楽の世界観と地続きのものだ。しかし、この困難な状況の中だからこそ、その言葉と音楽はよりいっそう訴求力を増して胸に迫る。


インディーズデビュー以降は大木伸夫/佐藤雅俊(B)/浦山一悟(Dr)というラインナップも変わることなく、多様化する音楽シーンにあって3ピースというミニマムな編成でバンド表現の可能性を押し広げてきたACIDMAN。ロックを軸にジャズ/パンク/ボサノバなど多彩なテクスチャーを音楽世界に取り込みながら、その楽曲とアンサンブルは常に決然としたストイシズムに貫かれていたし、「時代を映し時代を象徴するポップミュージック」としてのロックの側面には一瞥もくれることなく、宇宙と生命の神秘の果てを一心に見据え、メロディとサウンドを紡ぎ続けた。

彼らがメジャーデビューを飾った2002年のシーンにおいても、その唯一無二の世界観&マインド、そこから生まれる強烈なダイナミズムとバイタリティはとりわけ異彩を放っていた。そして、だからこそその音楽は、ロックに「限界の先を目指す音楽」としての意味を求める人たちにとっては、圧倒的な魅力として響き続けてきた。その点において、ACIDMANの表現は微塵も揺らいでいない。し、2017年の最新11thアルバム『Λ (ラムダ)』は、まさにその世界観とアティテュードの高純度結晶と呼ぶべき名盤だった。

2018年7月、『Λ』を携えた全国ツアーのファイナルとして、6度目の日本武道館ワンマンのステージに立ったACIDMAN。『Λ』の中でもビッグバンの如き凄絶な存在感を放つハードバラード“光に成るまで”の絶唱が、満場のオーディエンスの割れんばかりの拍手喝采に迎えられた後、大木伸夫は泣いていた。「感激の男泣き」ではなく、それこそ感情のままに涙をあふれさせる少年のように。

「こういうテーマを扱うのって、すごく難しいことではあるんだけど。もっとわかりやすいアプローチをすれば、もっといろんな人に届くのかもしれないんだけど、僕はこのやり方が好きで、このやり方しか知らなくて……そして、このやり方だからこそ集まってくれるみなさんが大好きです」

この時の万感の想いを、大木がMCでそんなふうに語っていたのが印象的だった。それはまさに、子供の頃から宇宙に無限の憧れと畏れを抱き続け、それを音楽を通してひたむきに追い求めてきた「少年・大木伸夫」の想いが、長年の時を経て最高の形で報われた決定的瞬間だった。

上記の生配信中にも披露されていた新曲“灰色の街”が、『Λ』以来約3年ぶりの新作リリースとなるニューシングルとして6月3日(水)に発売されることも決定。音楽の理想を自ら更新し続ける彼らが『Λ』の先に描く世界を、どこまでも見続けていきたいと思う。(高橋智樹)
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