作り始めた時、素敵なレストランで食事をしながら聴けるような、家具の一部になれるようなレコードを作りたいと本気で思ってたんだよ。でもこのアルバムを聴きながら食べるなんて絶対無理だ!
レディオヘッドのキャリアの転換点として名高い傑作にして問題作、『OK コンピューター』がリリースされたのは97年のこと。このインタビューは同年のリリースに合わせて行われたもので、本作完成直後のトム・ヨークの興奮が端々から滲む内容になっている。
20周年記念盤『OK コンピューター OKNOTOK 1997 2017』のタイミングでも回顧インタビューを受けていた彼だが、20年後のそれが怪物的傑作に客観の評価を与えるものだったのに対し、本インタビューのトムは未だ同作の怪物性に気づいておらず、まるで「普通の新作プロモ・インタビュー」のように語っているのが新鮮で貴重なのだ。
『OK コンピューター』のレコーディングはカオスを極め、バンドは解散寸前まで追い込まれたと「史実」は伝えている。でも、ここで語られるのは混乱よりも自由、苦闘よりも喜びだ。
おもちゃを与えられた子供のように新しい機材をいじくりまわし、失敗を恐れず何度もチャレンジし、ついにブレイクスルーしたレディオヘッドの物語。これもまた、今なおエニグマティックな傑作として語り継がれる『OK コンピューター』の真実に違いないのだ。(粉川しの)
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