ザ・ウィークエンドが7億もの自腹を切ってまで作りたかった「絶対的に一人ぼっちの世界」――空前絶後の舞台でコロナ禍をエンターテインメントに昇華した、圧巻のパフォーマンスをレポート!

ザ・ウィークエンドが7億もの自腹を切ってまで作りたかった「絶対的に一人ぼっちの世界」――空前絶後の舞台でコロナ禍をエンターテインメントに昇華した、圧巻のパフォーマンスをレポート! - 『rockin'on』2021年4月号より『rockin'on』2021年4月号より

2月7日フロリダ州タンパで行われたザ・ウィークエンドのスーパーボウル、ハーフタイム・ショーが圧巻だった。

アメリカでは約1億人が観るという史上最大の舞台にもかかわらず、コロナ禍によって、本人曰くスタジアムは「ほとんど空っぽ」という55年の歴史で初の逆境の中、行われた(実際は本来の収容人数の半分以下である2万5000人が現地で観ていた)。「自分の語りたい物語に合わないから、ゲストは誰も出ない」と過去にコラボしたケンドリック・ラマービヨンセなど豪華な面々とは共演しなかった。自腹で約7億円を出してまで、たった一人で13分間のパフォーマンスを自分のビジョン通りにやり遂げたのだ。

イベントの前日に一人薄暗い巨大なスタジアムで夕食を食べる映像を公開していたが、このショーによってその映像の意味にも納得した。その姿は去年の3月以来の自身の毎日だったからだ。つまり、これは彼一人であることに意味があったのだ。最新作の『アフター・アワーズ』は、期せずしてコロナでアメリカがシャットダウンしたその直後の3月20日に発表された。“ブラインディング・ライツ”がビルボード史上最大のヒットとなったことが示唆するように、このディストピアでダークでシュールな日常に彼の最新作がシンクロしていた。そのMVの世界観を引き継ぐ今回のパフォーマンスで彼は、ベガスを再現したセットにジバンシィのキラキラな真っ赤なスーツで登場。“スターボーイ”では、ダフト・パンクの代わりに目が赤く光るロボットの聖歌隊を並べ、ネオン・サインで浮かび上がる彼の歌詞の引用は「LONG ENOUGH(長い間)」、「ALONE(孤独)」、「TOUCH(感触)」などだ。“キャント・フィール・マイ・フェイス”ではキラキラな迷宮の中で包帯を巻いたクローンに囲まれ出口を見失い、“アイ・フィール・イット・カミング”ではただ上がりまくる花火の前で真っ白な歯を見せて笑っていた。“ブラインディング・ライツ”では、初めて巨大なフィールドに出て、フェイス・マスクをした大量の人々の中で一人踊り続ける圧倒的に孤独かつカタルシスのある大フィナーレを飾った。

その一部始終は1億人向けの史上最大のイベントをTVの前でたった一人で観ているそれぞれの人の心に直撃したはずだ。彼は「俺には君が見えている」と語りかけるような親密なパフォーマンスをしたのだ。この日のザ・ウィークエンドの何が偉大だったのかと言えば、つまりその全てが2020年、21年を生きる感覚や日常、その空虚さと孤独であり、それを大ヒット曲とともに、空前絶後の舞台でエンターテインメントにしてみせたということなのだ。(中村明美)



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