「歌詞はほとんど書き終わっていたから、コロナ禍が影響した、ということはなかった。ただ皮肉なことに、この状況を通して意味が解釈できるものになったように思う。みんながより多くのことに感謝して、今だからこそより多くが得られる作品になっていればいいな」
ロックの未来。米国はミシガン州の片田舎から登場したグレタ・ヴァン・フリートは、ロックの復興を願う世代からも、それを意識せずに育った世代からも救世主のごとく讃えられてきた。ただ、彼らだっていつまでも平均年齢20歳というデビュー当時の若さのままではないし、新鮮さというのは時間経過とともに自然に失われていくものだ。
しかし、『ザ・バトル・アット・ガーデンズ・ゲート』と銘打たれた彼らの第2作には、デビュー作『アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー』が何かの間違いで生まれたわけではないことを証明して余りある説得力とスケール感がある。たとえば前作が旅路の果てに見つけた秘境だとすれば、今作はまるでそのランドスケープを宇宙から捉えているかのようだ。
これは疑うまでもなく、彼ら自身にとっての世界がここ数年の間に飛躍的に拡がり、バンド自体が進化を遂げてきたことの証だろう。
フロントマンであるジョシュ・キスカ(Vo)にアルバム完成に際しての第一声を求めると「この出来栄えについてはめちゃくちゃ誇りに思ってる。もうすぐみんなに聴いてもらえると思うと、ものすごく楽しみだよ」という屈託のない言葉が返ってきた。が、その先に続いたのは、このバンドの進化と深化の速度が尋常ではないことを裏付けるかのような、実に深みのある言葉ばかりだった。(増田勇一)
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