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マット・マグワイア(ザ・チェインスモーカーズ)
今特集で名前が挙げられたドラマー達のうち、最もバンド在籍歴が浅いのは彼ではないだろうか。オーストラリア出身のマット・マグワイアは、ニューヨークのDJデュオとして結成されたザ・チェインスモーカーズの3枚目となるアルバム『ワールド・ウォー・ジョイ』(2019年)制作期間中に、グループへの正式加入がアナウンスされた。
それ以前からサポート・メンバーとしてレコーディングやライブには参加していたものの、『ワールド・ウォー・ジョイ』収録曲で用いられているビートはほぼプリセットとエディットによるもので、彼の生々しいドラム・プレイを受け止めることはできない。
そもそもマットは、ライブの演出も担当するスペシャリストとしてグループに貢献しているらしく、ドラマーとしての本領もライブでこそ発揮される変わり種なのだ。彼は何年も、既存のロックやEDM、ヒップホップなどの楽曲にドラム演奏を被せ、その動画を公開してきたYouTuberとしての経歴を持っており、クリックを踏まえながらも前のめりでロックなアタック感を誇る、特殊なプレイ・スタイルを編み出してきた。
彼がチェンスモのひどく情緒的な歌をブースト・アップさせることで、そこには得体の知れない、巨大な感情の怪物が立ち現れることになる。音源作品とはまるで別物の、強烈なライブ体験だ。ぜひ、ライブ動画などでチェックしてみて欲しい。(小池宏和)
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