「時々すごく不安になる。たいていは、いろんな人が寄ってたかって、ばらばらな方向に僕を引っ張ろうとするときだね。そういう時に不安が押し寄せてくる。『ちょっとでいいから、息をつく時間をくれないか』って思うんだ」
いまだにお騒がせセレブの印象を持つ人も少なくないのかもしれない。00〜10年代、アイドル路線でアクセル全開だったジャスティン・ビーバーは当時、若くして収めた成功による重圧や孤独から逃げるように、ドラッグや飲酒に頼り、それに伴う悪行で世間を賑わせていくことになる。
しかし、15年には「再起」として『パーパス』を発表。ディプロやスクリレックスら売れっ子DJを迎えた同作では、ジャンルレスなプロデュース・ワークを成功させて現代ポップ・シーンの先陣を切り、以後数年、当初から力を入れていたコプロダクションに拍車をかけ、ヒットを飛ばす華やかなフィーチャリングには必ず彼の名前がある、という方程式さえ生み出した。
そして19年、過去の過ちを公に認め、原点回帰となる “R&Bieber”の幕開けを宣言し、愛と優しさに包まれた『チェンジズ』、より良い人間になると誓う『ジャスティス』をリリース。暗闇を抜けた彼は今、世の正義や守りたいもののために歌うのだ。やがてビリー・アイリッシュやショーン・メンデスら新世代から慕われ、世界と共鳴するアーティストとして日の目を見るジャスティンの貴重な1ページが、ここに刻まれている。 (新井穂奈美)
ジャスティン・ビーバーのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。