思ってるように歌は一切歌えない。
どうやって歌えばいいかわかってない。
演奏も正しくはどうすればいいのかまずわかってない。
なぜか自己肯定感だけ、なんか行ける予感だけあるから。
外に出るため、自分を守るための自分の武器を作っていった
My Hair is Badのワンマンライブを初めて観たのは、2016年の恵比寿・リキッドルーム。『woman’s』がリリースされるちょっと前だから決して早いとは言えない。けれど自分史上稀に見るくらい感情を揺さぶられた。スタッフに用があって終演後、バックステージに行ったが、椎木はこの日、体調が悪かったらしく楽屋で突っ伏してたので挨拶はしなかった。体調がライブに影響しないはずはないが、それを何か途轍もない熱量に変えてライブにするバンドだと知った。
それ以降、取材を頻繁にして、近郊のライブは必ず観て、行ってない公演のセットリストまで眺めては、あれこれマイヘアに思いを馳せるようになった。簡単に言うと、僕は彼らに夢中になった。ライブはいつもすごかった。アルバム『mothers』『boys』も、間にリリースされるEPも、曲は最高だった。でもメジャーバンドの活動としては少し不安というか、言葉を選ばずに言えば「頼りなさ」も感じていた。それが2022年にリリースされた『angels』で一気に変わって、改めて強烈にメジャーシーンで何かやってくれるバンドに思えた。また怒涛のライブの日々。リリースが1年以上空いたが、曲をたくさん作っていることは聞いていて、今回は不安を感じなかった。
そして最高のアルバム『ghosts』完成のタイミングで、この表紙巻頭特集をできることになった──こんな個人的なトーンで特集のリード文を書いたことはないし、これからもない気がする。でもこの特集で、My Hair is Badのありのままの「青春」と「ロック」と「未来」すべてに、彼らに夢中になった自分のすべてを懸けて向き合ったことを伝えたい。椎木の2万字インタビュー、バヤじゅんが語る裏バンドヒストリー、あと清水依与吏と椎木の対談はback numberのファンのみなさんにとっても貴重な内容にできたと思うが、対談も含めると異例のボリュームで語られた言葉たちを、My Hair is Badの音楽とかライブの一部のようにみんなの感情を揺さぶるものとして残したくて、この特集に「完全読本」と付けた。
さあ、読んでくれ!
インタビュー=古河晋 撮影=YUKI KAWASHIMA
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
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