Adoがファーストアルバム『狂言』をリリースしたのが2022年1月26日。あれからすでに2年半近くが過ぎたことになる。ご存じの通り、その間Adoはとんでもない勢いで挑戦を続け、そのたびに自身の表現と、「Ado」という現象を進化させてきた。
もはや遠い昔のことに思える映画『ONE PIECE FILM RED』での歌唱キャスト出演&楽曲集『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』リリース、それを経てそれまでボカロPが大半を占めていた楽曲提供陣に多彩なアーティストやクリエイターの名前が並ぶようになり、その他方で彼女の「歌い手」としてのアイデンティティを改めて示すようなカバーアルバム『Adoの歌ってみたアルバム』を作り……クリエイションの面で「それまでになかったこと」を次々と成し遂げる一方で、2023年の大晦日に『NHK紅白歌合戦』出場を果たし、2024年に入ってからは初のワールドツアー「Wish」、女性ソロアーティストとして初の国立競技場でのライブ「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」、そして7月から始まる全国アリーナツアー「モナ・リザの横顔」と、そのパフォーマンスの規模もそこに注がれる注目度も爆発的に拡大し続けている。
国立競技場のステージでも、そして本誌2024年7月号のインタビューでもAdoは「日本を背負って立つ」という趣旨の発言をしていたが、スケールアップし続ける活動がAdoの中にそうした自意識を生み出し、そしてその意識がそのパフォーマンスをさらに強靭で挑戦的なものにしていく──そんな怒涛のスパイラルの中で前進し続けているのが、今現在のAdoだ。文字通り「Ado」という生き様とその中で手にした「歌」というたったひとつの武器を握りしめて、彼女は世界に闘いを挑んでいる。
そんな中で、来る7月10日にリリースされるのが、2作目のオリジナルアルバムとなる『残夢』である。「見残した夢」「見果てなかった夢」「目覚めても心に残っている夢」──そんな意味を持つ言葉を掲げたこのアルバムには、『狂言』がそうであったように、Adoがこれまで生きてきた日々が刻まれている。その活動の広がりと比例してますます個性豊かな楽曲が揃ったこのアルバムを通して、今、ここに辿り着いたAdoの軌跡を振り返ってみたい。(以下、本誌記事に続く)
文=小川智宏
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
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【JAPAN最新号】16の楽曲に刻まれた「夢」の軌跡──ニューアルバム『残夢』に込められたAdoの2年間の物語を辿る
2024.06.28 12:00