若干の緊張とともに待ち望んだ開演時刻、客席の明かりが落ち、拍手が沸き起こる中、ふらりとステージに現れた清水。黒のTシャツにスウェットパンツというラフな出立ちだ。そして椅子に座ってギターを手に取ると、ジャカジャカとかき鳴らして「清水依与吏です、よろしくお願いします」とひと言。にやりと笑って「そんな大層なことはやらないよ、別に」と呟くと、おもむろにコードを弾き、ひと呼吸置いて歌い始めた。“恋”だ。ざわざわしていた会場が途端に静かになる。響き渡るのはギターの音と清水の歌声だけ。弾き語りなので当たり前だが、巨大なさいたまスーパーアリーナにあってその歌はとても近く聞こえてくる。途中でトチって「ちょ、ちょっと待って」とか言って笑いを誘いながらも、シンプルな音像で空間を掌握していく。歌い終えて笑顔を見せると、客席ではわーっと拍手が広がっていった。続けざまに披露されるのは“東京の夕焼け”。バンドで演奏するときとは違い、清水自身の間で進んでいくメロディが、この曲のどこか寂しげで優しい情景をますます鮮やかに浮かび上がらせる。(以下、本誌記事に続く)
文=小川智宏 撮影=半田安政、河村美貴(田中聖太郎写真事務所)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年2月号より抜粋)
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