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    【JAPAN最新号】猫背のネイビーセゾン、時代を乱反射して放つ強烈な光彩

    【JAPAN最新号】猫背のネイビーセゾン、時代を乱反射して放つ強烈な光彩
    郷愁と空想、哀愁と狂喜が手を取り合うように結合と反発を繰り返してどうしようもないほどに切実なメランコリックを胸の奥から引きずり出してくる。身体が自然と踊り出す、というよりは否応なく踊らされてるような感覚。ただ鳴っているのではない。単なるダンスロックではない。手を伸ばして理解を求めてくるのである。そこに彼らの音楽の核心があるように思う。2019年、神戸で結成。ネオンロックを提唱する4人組バンド・猫背のネイビーセゾンである。  


    2月にSUPER BEAVERsumikaマカロニえんぴつらを擁するエッグマンが運営する音楽レーベルmurffin discsから所属第1弾作品『NEON EYES』を発表。昨年10月にリリースされTikTokでも話題を集めた“DANDANDANCE”をはじめ全6曲が収録されている。身体に刻みつけるように躍動するビートとがっちりスクラムを組んだ骨太なベース、楽曲を一発で印象づけるギターリフ、キャッチーで中毒性の高いワードをちりばめながらしっかりとロックサウンドたらしめるボーカル。そんな沸々と沸き踊る音像の内側には確かに切迫した感情が渦巻いていて、しかしそんな影にこそ光を当てて、自身が直面する現状さえも浮き彫りにするのだ。


    至極内省的な思いを吐き出しながら《私の未来は何処にあるの?》というドキリとする問いかけで終わる“ごく身近な監獄”にも、再録曲 “偽り切ないな”にも、猫セゾなりの必殺サマーチューン“バトルサマーⅢ”にも確かにその陰影は刻まれている。中でも1曲目の“Mazer”はいつになくダークでヘヴィな深層世界に飛び込んでいながらサビでは突き抜けるほどの高揚感を叩きつける。怒りに似た感情の爆発。その振り幅にすっかりやられてしまった。音が言葉を引き連れて、その先でくすぶる感情を呼び覚ます。
    ライブバンドとして着実に楽曲を育ててきたからこそ、こうして彼らは聴き手の理解を求める音楽を肉体的に鳴らすのだ。時代の浮き沈みを乱反射するようにうねるネオンロックは今、強烈な光彩を放っている。

    文=橋本創
    (『ROCKIN'ON JAPAN』2025年4月号より抜粋)


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