そもそも今の時代に女性バンドにだけ「ガールズ」と付けるってどうなの?という話はあるにせよ、歌声や演奏の些細なニュアンスや歌詞表現の角度なんかには男女の違いはやっぱりある。同じコードを弾いて同じ内容を歌ったとしても、滲み出てくる赤裸々さや儚さ、あるいは健気さみたいな要素にグッときてしまった経験は少なくない。
ガールズバンドとひと言で言ってもいろんなタイプ──アイドル路線に近い場合もあればゴリゴリの技巧派だって存在する中でも、バンドカルチャーの青春性や背負ってきたストーリーが、ある種のナイーブさを保ちつつ詞曲へ注ぎ込まれているかどうか。僕が「純正」を感じるツボはそこにある。
専門学校で出会ったメンバーで2022年に結成された、ちゃくら。最初にリリースされた“海月”の当時の音源は、音の選択も演奏面もはっきり言って粗削りで、いきなり高完成度のトラックを作り上げてSNSに展開するのも当たり前となった現代では異彩を放つのだが、結果として多くの耳目を集めることに。
バックボーンに目を向けてみても、ちょうど高校時代をコロナ禍が直撃して青春を奪われた世代の4人が出会い、バンドに懸けて学業をドロップアウトするという経緯からもう、絵に描いたようなバンドマン。そのあたりの心情をエモーショナルに切り取った“まるで駄目な女子高生はバンドマンになった”の独白と宣戦布告は、世間ではマイノリティであるバンド界隈の中のさらにマイノリティ、ガールズバンドだからこそ叫べるリアルだ。
結成から3年。初のフルアルバム『いびつな愛ですが』で彼女たちが鳴らす音は、年間100本超えというライブの経験やそれに伴う技術面の向上を反映して、見違えるほど頼もしくなった。その一方で、未完成ゆえの初々しさや瑞々しさもまだまだ残されている。このまま猪突猛進を続けてもよし、じっくり精錬してゆくのもまたよし。その前途には楽しみしかない。
文=風間大洋
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年7月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』7月号のご購入はこちら
*書店にてお取り寄せいただくことも可能です。
ネット書店に在庫がない場合は、お近くの書店までお問い合わせください。