これまでもマーク・ロンソンやポール・エプワースらと新作制作を進めていることが伝えられてきていたポール・マッカートニーだが、『ローリング・ストーン』誌はポールがジョージ・マーティンの息子のジャイルズ・マーティンやグリン・ジョンズの息子のイーサン・ジョンズらとも作業を続けてきていることを明らかにしている。
特に最近作業を重ねてきていたのがポールとイーサンの作業で、ザ・ビートルズのほかザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フーなどを手がけてきたグリンの息子イーサンは、ライアン・アダムスの『ハートブレイカー』、『ゴールド』、『29』、ローラ・マーリングのこれまでの3枚のアルバム、ザ・ヴァクシーンズの『カム・オブ・エイジ』などを手がけてきたことで知られているが、イーサンの作品で特に有名なのはキングス・オブ・レオンのファーストとセカンドであり、ポールもこの2枚を気に入ってイーサンに打診を入れてきたとか。
「『ポールとスタジオに入りたいですか?』という連絡を受けてね、『もちろんです!』って即答したよ」とイーサンはその時のことを振り返っている。二人の作業の手始めとしてエアー・スタジオで制作されたのが、"Hosannah"という曲でイーサンはその作業を次のように説明している。
「マイクを何本か立てて、4時間くらいのうちにものすごくいいトラックができちゃったんだよ。確か、最初のテイクと2回目の間に編集をしてみたんだけど。とんでもない雰囲気のよさがあって、なんかいろいろ喚起される音で、歌詞も面白くて、パフォーマンスも素晴らしかったんだ。それからちょっと実験を始めて、ぼくがいろいろサイケデリックな効果を入れてみたんだよ。一緒にやってて楽しいんだ。『あれもやったら? これもやったら?』って一緒にいるだけでインスピレーションを受けまくるんだよ」
その後二人はアビイ・ロード・スタジオに向かい、一ヶ月をかけて4トラックを制作したという。テープに楽器を直録りしたというこれらの音源ではポールがギター、ベース、ドラム、キーボードを担当し、イーサンもギター、ドラム、キーボードで貢献したとか。伝説のミュージシャンと伝説のスタジオで作業を重ねたことについてイーサンは目から鱗が落ちるような体験だったと次のように語っている。
「ポールがベースのシールドをアンプに差し込んで、アンプの前にマイクを設置して、コントロール室に戻ってフェイダーの音量を上げると(あのポールのベースの音が)そのまますぐにスピーカーから出てきたんだよ。僕が手を加える必要はまるでなかったんだ! 僕にとってこれは最大の発見の一つだったね。やっぱり人はエフェクターとか機材とかにものすごくこだわりがちで、確かにそういうものも重要なんだけど、でも究極的に言うと、『リヴォルヴァー』のベースのサウンドはただのポールなんだよね。ポールになにを弾かせたとしても、ポールはポールのあの音を出してくるんだよ」
なお、ポールの新作は秋にもリリースされると『ローリング・ストーン』誌は伝えている。