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サウンド・チェックの締めくくりに"ロックンロール"のサビ部分だけを披露して、開演直前のフロアの温度をグッと上げてしまったくるりのステージ。改めて、フォーキーにして大らかな、ゆったりとうねる岸田繁の歌メロの中に和の郷愁までも感じさせる"さよならアメリカ"から本編をスタートだ。そしてどこかコミカルであり強い情感も漂わせる"コンバット・ダンス"、そして大振りなギター・リフを中心に、4ピースのバンド・サウンドが弾ける"目玉のおやじ"と、今年9月にリリースされた目下の最新アルバム『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』からの楽曲群が続けざまに放たれる。ドラムはおなじみBobo、そしてギターはフジファブリック山内総一郎。前作『魂のゆくえ』はとてもプライベートな思いが詰め込まれたエモーショナルなアルバムだったけれど、今年のくるりは珍しいぐらいのスケールの大きなロック・サウンドによって、聴く者の日常にするりと浸透してゆく、ポップで力強い歌の数々を聴かせてくれたのだった。

「皆さんは、ええ年の瀬を過ごしておられますでしょうか?くるりです。我々はこれで仕事納めということでね、あとはゆっくり新年を迎えたいと思ってるんですけども。皆さんも事故などに遭われないようにね、来年もええ年にしてください」。と岸田。来年もええ年に、という言葉に、なんだかとても胸の温まる思いがする。もちろん、別に今年はええ年じゃなかった、という人はたくさんいるだろう。でも、「ええ年だった」と思えること、そう人に伝えられることは、本当に幸せなことだと気づかされるのだ。「たくさんの人の前で話すのには慣れないもんでね。風呂で喋ってるみたい。なので風呂の歌でも」とこれまた最新アルバムから"温泉"へ。なんというささやかな、そして絶対的に幸せを捉えた歌なんだろう。クライマックスは名曲"ワンダーフォーゲル"からそのままメドレーのようにして繋ぐ、『みやこ音楽祭』でも披露されていた"鹿児島おはら節"だ。岸田は「今日はシングル曲とかあまりなくて、盛り下げるだけ盛り下げて帰る」とか言っていたけど、今のくるりのロック・サウンドは最高にエキサイティングで、そしてその歌は耳に馴染んだ民謡のようにキャッチーだ。素晴らしい年末のひとときをありがとう、くるり。(小池宏和)