鬼才ホドロフスキーはこうして出来上がった! 自伝的新作『リアリティのダンス』

鬼才ホドロフスキーはこうして出来上がった! 自伝的新作『リアリティのダンス』

ついに公開されたアレハンドロ・ホドロフスキーの自叙伝的映画『リアリティのダンス』が、素晴らしい。『エルトポ』や『ホーリー・マウンテン』、『サンタ・サングレ/聖なる血』などなど、過去の作品に共通する象徴的なイメージが、なるほど、そういうことだったのか!と色々と解明される、もう、ファンにはたまらない作品。ホドロフスキーという人間がより肉体的に、理解できるというか。今年で85歳、しかしその映像からは、鮮烈でエネルギッシュなイメージがとめどなく溢れ出し、観ている者の道徳観をひっくり返す描写も相変わらずで、本当に驚かされる。
故郷チリの田舎町、スターリンを崇拝する厳格すぎる父(麻酔なしで歯の治療をさせたり)、言葉をすべてオペラのように歌う母性の塊のような巨乳の母。と、デフォルメされた街の様子や家族のキャラクターも強烈すぎる! でも、みんなすごく愛しい。それがきっとこの作品を描いた理由なのだろう。

それにしても、「お金への抒情詩」という冒頭に出てくるホドロフスキーの詩は最高だ。 
「お金は血のようなもの、流れていれば命を生む。
お金はキリストのようなもの、分かち合えば、祝福される。
お金はブッダのようなもの、働かなければ何も得られない。
お金を使って世界の花を開かせる人に、お金は光を当てる。
お金を絶対視して 魂の豊かさと勘違いする人をお金はさげすむ。 道義心と死に違いはない。
死と富に違いはない。」
今作の製作資金に苦しんだことがその背景にあるそうだが、このテーマは作品の全編に流れている。
「お金」「家族」「歴史」といった「物語」があることで、これまでの作品に比べて多くの人に理解される作品となっているので、未体験者もびびらずにホドロフスキーの洗礼をぜひ受けてほしい。(井上)
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