『ドロステのはてで僕ら』はあまりにも2020年的な傑作映画

エンターテインメントとは「才能×予算×組織力×最新テクノロジー」を最大化するパワーゲーム…………では(今の時代においては)まっっっっったくなくなりつつある。
だって面白くなかったら、そのパワーには何の意味もない。
論理的に考えて「アイデア×ピュアな好奇心×仲間力×コツコツ積み重ねる努力」の方が面白さを生み出せるはず。
それは理屈の上での話で実際は、みんな有名なスターがたくさん出ている大規模作品を楽しんでいる?
だからその論理の正しさを証明したのが、この『ドロステのはてで僕ら』という映画だ。

『カメラを止めるな!』とよく比較されている。
高予算映画に辿り着く過程としての低予算映画ではなくて、低予算も含めた「凄みゼロだからこその凄さ」で表現が完成されていて、「こんな凄い作品をあとどうやって作る方法があるか」という純粋に高いハードルを作り手自身にも突きつけてくるところは同じ。
ただ『カメ止め』ほどの奇跡の特大ホームラン感はない代わりに、その「凄みゼロだからこその凄さ」がじわじわ沁みてきて『カメ止め』とはまた別の「はて」に連れていってくれるのがこの映画。

いつのことかもわからない未来へのビジョンを借りものの言葉で大仰に語っていないで、今と地続きのちょっと先の未来を少しでも良くするためにピンチをチャンスに変えるアクションを自分の手で起こせ、というまさに2020年を生きる僕らに必要なメッセージが滲んでいるところも好きだ。

まだ映画通とヨーロッパ企画の世界観に馴染みのある人たちが盛り上がりの中心になっている感じはちょっともったいない。
さらに幅広くたくさんの人に観てほしい作品。(古河晋)
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