2作目の長編『ミッドサマー』のこういう映画としては(どういう映画か説明することは極めて困難)異例の大ヒットを受けつつ、Netflixで視聴可能になったことも機に改めて脚光を浴びているアリ・アスター監督の長編1作目『ヘレディタリー/継承』。
観た人の心にどう作用するか、はっきり言って保証できないので、万人が絶対に観て後悔しないとは言えないのですが、少なくとも『ミッドサマー』を観て、途中でどう思ったとしても、観終わった時に残った正体のつかめない感情には惹かれ続けているという人なら、絶対観てほしい作品。
(ここからネタバレ注意)
この『ヘレディタリー/継承』はたぶんホラー映画で、間違いなくトラウマ映画。
でも最終的には恐怖やトラウマを観る人に残すための映画ではない。
途中までは霊的な力によって「呪い」を招き入れる、いわゆるホラー映画のフォーマットに則った物語に感じられる。
しかし実は登場人物を呪っているのは、もっと現実的な血の繋がりや「愛」という虚構の言葉に基づく人間関係。
むしろ、その呪いを解き放つのが霊的な力、というアイロニカルな救済と癒しの映画だ。
実はトラウマ要素になっているのも、人間の行動や性が発端になっていることがほとんど。
『ミッドサマー』は、それを霊的な力を使わずに人間が生み出した儀式によって同様の救済と癒しに導くところがまたヤバいのだが、『ヘレディタリー/継承』にはまた格別の怖さと気持ち悪さ、翻って美しさと快感がある(と感じてくれる人が一定数いるはず!)。
尚、アリ・アスター監督の次回作は約4時間の悪夢のコメディになるそうです。(古河晋)
『ミッドサマー』を乗り越えた人には前作『ヘレディタリー/継承』という地獄の門が待ってます
2021.01.15 10:10