昨日の『SOMEWHERE』に続き、最近観た映画そのものより映画音楽について。
アカデミー作品賞にノミネートされているデヴィッド・O・ラッセルの『ザ・ファイター』。
ハリウッド随一の曲者がアカデミー賞に絡むのは、なんだか変な気がするけど、実話に基づくだけあって、監督の作品の中ではかなりオーソドックスな作りになっているスポ根。
人体改造をして、元プロボクサーのジャンキー役に挑戦したクリスチャン・ベールの演技が絶賛されていて、確かにその迫力は圧倒的なんだけど、世界チャンピオンのミッキー・ワードを演じたマーク・ウォールバーグの強さの中にダメさがちゃんと宿った演技がやっぱり個人的にはツボだった。
で、物語の舞台となる90年代初頭を反映して、やたらとホワイトスネイクが流れるのが歯痒いけど、音楽がそれほどフィーチャーされた映画ではない。
ただ、ところどころでツェッペリンやストーンズやエアロのクラシックが巧妙に使われているのが素晴らしかった。
特にレッド・ツェッペリンの“グッド・タイムズ・バッド・タイムズ”。
マーク・ウォールバーグがボクシングの練習に励む裏で、兄役のクリスチャン・ベイルがドラッグ漬けになっている、という非常にわかりやすい、まさに“グッド・タイムズ・バッド・タイムズ”を演出したモンタージュ・シーンで流れるんだけど、曲の使われ方そものものより、劇場で爆音で流れたこの曲自体の破壊力にやられた。
ジョン・ボーナムの神懸りのドラムたるや……いや〜、興奮した。
映画も素晴らしかったけど、自分の中ではレッド・ツェッペリンのすごさを再確認させてくれたほうが大きかったかもしれない。(内田亮)
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