もしぼくが、今誰かに「ダルもイッチも出ないＷＢＣなんてテンション上がらないよ！
そのかわりに、テンション上がる野球マンガ教えて！」と言われたら（言われないと思うけど）、迷わずこのマンガをお勧めしようと思う。
『ボール・ミーツ・ガール』
タイトルからも連想できるかもしれないけれど、主人公は女子です。女子高生です。
野球の天才である女子高生が甲子園を目指す、で、男子たちはその手助けをするべく練習に励む、ざっくり言ってしまうとそんなマンガです。
ただ、めちゃくちゃキュンキュンします。かつ、ちょっと信じられないくらい、野球的ファン的に面白いです。
あ、ちなみに、女子生徒は高野連の公式戦には出れないんですよ、現行のルールだと。
このマンガは今後、そのあたりをどうかいくぐっていくのか、そのあたりも大変気になるところだったりする。

さて、この『ボール・ミーツ・ガール』、原作者は『GIANT KILLING』の綱本将也氏。
だからといって、野球版ジャイキリ、と言い切ってしまうとさすがに語弊が生まれるかもしれないけど、まさにそういうマンガなのだから仕方ない。
総合的な体力、選手層、個々人の能力、あらゆる要素が強豪チームに劣るとき、われらは何に一点張りして戦うべきなのか、どこに一縷の勝機が存在するのか、それを徹底的に、しかもリアルに追及している、凄まじく示唆的なマンガなのだ。
高校生同士の戦いにおいて、何をもって「絶対的精神的優位」に立つのか、あるいは、ホームランも連打も期待できないなら内野安打を打つしかない、そのためには「時間」を司るしかない……などなど、およそ高校野球とはかけ離れたタームが頻出するわけですが、しかし、どこからどう読んでも高校野球マンガとしてリアルなんだよなあ。
近いうちに、このマンガの戦術をヒントにするチームが出てきてもおかしくない。そのくらい、「ああ、その手があったか！」的野球論が開陳されまくるのですよ。
先日、２巻が出たばかりなので、「黒田も青木も出ないＷＢＣなんてテンション上がらないよ！」とお嘆きの野球好きなあなた（しつこい？）、ぜひ読んでみてください。

ドラフトも日本シリーズも終わり、日々の張り合いをだいぶ喪失している私、小柳がお届けしました。（小柳）