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    サカナクション「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」を聴きました

    サカナクション「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」を聴きました

    サカナクション、7月20日リリースのニューシングル、
    「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」、聴きました。

    まず、理屈っぽい。
    というのは「~せいです」とか付いてる曲のタイトルからして、もう明らかですが。
    というか、山口一郎は、そもそもそういう人だとも思いますが。

    「うれしい」とか「悲しい」とか「楽しい」とか、そういう感情が
    自分を襲ったとして、それをいちいち「なんで?」と考えずには
    いられない。
    それも、「うれしい」とか「悲しい」くらいなら、「なんで?」と
    考えるのもまあわかるが、たとえば、「せつない」とか「胸がぐわーってなる」とか
    「脳がふわあってなる」とか、そういう抽象的で感覚的で言葉に
    置き換えづらい感情に関しても、いちいち「なんで?」って、
    つきつめずにはいられない。
    そういう人ならではの理屈っぽさ。

    なんだけど、ただし、曲そのものは、たとえば2コーラス目でバンド・サウンドになり
    ボーカルにぶあついコーラスがついた瞬間、ここまで出てこなかった
    コード進行&メロディに突然移った瞬間(大サビ的な箇所ね)、
    急にブレイクしてピアノが鳴る瞬間──
    など、そのたびに……つまり、曲が展開するたびに、そういう
    理屈っぽさとは正反対の場所にあるみたいな、「うわ、気持ちいいー!」と
    口からもれてしまうような、どえらい音楽的快楽が襲ってくる、聴いていると。

    数年前、サカナクションのライヴを初めて観た時は(確か下北沢ERAだったと思う)、
    正直言って、「これは新しい!」とか「斬新だ!」とかは、思わなかった。
    音楽的手法自体は、くるりやスーパーカーが何年も前にやったことを
    今やっている感じなんだけど、ただし、作詞作曲能力とアレンジ力と演奏力が高いので
    すばらしい音楽になっている、そういうものだなあと。

    今でも、僕のサカナクションに対する、そういう認識は、あまり変わらない。
    ただ、それをものすごいテンションと集中力とアイディア力で
    もってやれば、時として……なんていうんでしょう、音のパーツパーツは全部
    知っているものでしかないのに、組み合わさった全体像を見ると、
    「うわ、何これ?」って言いたくなるような、新鮮な気持ちよさに
    満ちたものに、化けてしまうこともある。
    かといって、たとえばミクスチャー・ロックの新しさとも、
    ちょっとまた違うんですが。
    なんていうんだろう、既知のものを組み合わせて磨くことによって、
    未知のものが生まれてしまうような。といえばいいのか?

    なかなかうまく説明できませんが、とにかく、この曲、あからさまに
    サカナクションの新境地だと思います。
    すばらしい。
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