何か辛いことがあったときに、ライブを観て励まされる、というのはよくあることだ。しかし、サンボマスターのライブは特別だ。「自分にはこんな傷があったのか」と、知らず知らずのうちに心に抱えていた微細な傷を浮かび上がらせる。自分は強いと信じている人ほど、隠していた自分の脆弱さを感じ、思わず涙を流してしまうかもしれない。

ライブのタイトルにもなっている「全員優勝」という言葉は、そんな彼らの包容力を象徴している。「生き残ったやつが優勝じゃないから」と山口(Vo,Gt)が言ったように、彼らの優しさは誰ひとり置いていかない。優しい言葉は時として無責任さを孕むことがあるが、サンボマスターの優しさは、共に歩んでくれるものだ。

サンボマスターの音楽は、ただの慰めではなく、聴く者を勇気づけ、前に進む力を与えてくれる。多くの音楽が本質的にそうであるとはいえ、改めてその尊さを感じたライブだった。

写真の花は来場者全員に配布され、1万2000本の「花束」が会場を彩った。
(古閑英揮)

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