SUPER BEAVERの富士急・コニファーフォレスト公演までの道のりには、バンドのあり方そのものが表れていた――先週発売の映像作品を観て

SUPER BEAVERの富士急・コニファーフォレスト公演までの道のりには、バンドのあり方そのものが表れていた――先週発売の映像作品を観て
SUPER BEAVERが7月に富士急ハイランド・コニファーフォレストでおこなった、自身最大規模の野外ワンマンライブの模様を収録した映像作品『LIVE VIDEO 6 Tokai No Rakuda Special at 富士急ハイランド・コニファーフォレスト』を観た。

“未来の話をしよう”というタイトルの曲があるほど、SUPER BEAVERは常に未来の楽しい計画を企てている。というのは知っていたつもりだったが、特典映像のドキュメンタリーを観て、このコニファーフォレストのライブが2021年から計画されていたと知り本当に驚いた。

2021年は、まだコロナ禍真っ只中のとき。ライブ活動は再開していたが、いろいろな制限があり、もう一生マスクを外してライブに行くことはないかもしれないとさえ思っていたような時期だ。そんな中でも、バンドがさらに飛躍するために明るい未来を描こうとしていたことにまず感動をおぼえたし、2023年の現在ではビーバーがコニファーフォレストでライブをおこなうことはまったく背伸びではなく、未来の計画に見合うバンドにちゃんと進化しているところもかっこいい。

そして、これまでの特典映像はメンバーの裏側の姿を覗けるオフショットという意味合いが強かったが、今回はひとつのライブが完成するまでのドキュメンタリーとしていつも以上にリアリティを感じた。スタッフの姿がこれまでよりしっかり捉えられているし、会場にいる「あなた」のことを最優先で考えるが故のリアルなメンバーの会話が映し出されている(特に胸を打たれたのは、臨時駐車場の混雑状況を聞き、対応しているスタッフに感謝を伝えていたところ)。『ROCKIN'ON JAPAN』の表紙巻頭の取材をした6月末頃も、武道館3daysの告知映像やメンバー考案のブースについて、合間を縫って話しているのを目の当たりにしていたが、ライブ演奏と直接的には関係ない部分も参加者の目線になって向き合い、運営スタッフの仕事といえるような部分まで気を配っている――私たちがどんな思いでライブに参加しているか、全部メンバーがわかってくれているような気持ちになるのは、細部にも妥協しない一つひとつの積み重ねがあるからなのだろう。

そして、このドキュメンタリーの見せ場と言っても過言ではないが、極限の集中力で声出しをしながら、あらゆるセクションのスタッフに挨拶して回りながらステージ袖に向かう渋谷龍太の姿に息を呑んだ。出番前に自分の世界に入って話しかけがたいアーティストや、逆に寸前までリラックスして会話を楽しむアーティストは見たことがあるが、目に見えてスイッチが入っているのに周りもしっかり見えているあのハイブリッドな立ち振る舞いには異様な雰囲気が漂っていた。その凄みは、ぜひ実際に映像を観て確かめてほしいと思う。

本編のライブ映像も、中継の際とは違うカット割りもあり、こんな表情をしていたのかと再発見もあった。当日会場に足を運んだ人ももう一度楽しめるし、まだSUPER BEAVERのライブを観たことがない人も、この映像を観るだけでもSUPER BEAVERがどんなバンドであるのか、感じ取ることができる作品だ。(有本早季)


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