"まっしろ”、"魔法のアト”以来のバラードソング、という公式の触れ込みだけあって、“白夜”はビッケブランカの歌心が前面に押し出された楽曲だ。
近年力を入れている海外での活動や経験がサウンドに色濃く表れていて、押し殺されたセンチメントや哀愁がカタルシスを生むといういわゆるJ-POP的なバラードソングの聴き心地とは一線を画している。聴き進めるごとに視界が開けていくような、孤独ではなく独立を歌うような力強さが全編を包み込む。
ラスサビで歌われる《明日はいい もう怖くない/わたしは超えた 誰も敵わない》という決意がためらいなくストン!と胸の奥にぶっ刺さる。
日本語の落とし込み方も独特で、4回登場する《去る》という言葉がフックとなって、一音一語というオーソドックスな音の嵌め方であるにもかかわらず、その一語が複数の意味を持っているような、もしくは言語が意味を超えた先で音として鳴り響くような歌唱力に息を呑んだ。
冬を舞台に終わった恋を乗り越え運命を切り開こうとする名バラード"まっしろ”から6年、夏の始まりに投下された今作“白夜”は悲しみや絶望に飲み込まれてしまわぬよう、そっと寄り添いながら私たちの心をいつまでも照らし続けてくれる。そんな確かな熱を帯びている。
9月には約3年ぶりのニューアルバムがリリース、こちらも非常に楽しみ。(橋本創)
『ROCKIN'ON JAPAN』8月号のご購入はこちら
ビッケブランカのバラード“白夜”が持つ不思議な力──その強さに救われる
2024.07.06 17:00