通称サンデメの奏でる音楽は、耳馴染みのよいメロディと浦の素直で力強い歌声と、ひとつの小説のように綺麗でありながらも日常生活の中で生まれるさまざまな感情をストレートな言葉に乗せて描かれる歌詞が大きな魅力のひとつである。さらに、楽器隊の演奏力の高さとポップスを基軸としながらジャンルを調節した演奏表現も面白い。みやはらが鳴らすギターのフレーズにはポップソングであろうとハードロック並の速弾きがところどころに入ってくる。ヒロトのドラムは繊細な打感と安定のリズム感で縁の下の力持ちという感じがあるのだが、こちらもところどころ遊びを織り交ぜたフィルやキメをサラッと入れてくるので、双方がまるで浦とともに楽器で歌っているように感じることができる。だからこそ、彼らが奏でるポップロックは独自性があって引き込まれるのだ。
そんなサンデメが3月2日に東京キネマ倶楽部で開催した「浦小雪 vs Sundae May Club」を観た。前半戦では、自身の内面をディープに描いた歌詞に、80年代、90年代のロックを基軸とした彼女のサウンドセンスが溢れる楽曲に乗せて、可憐にパフォーマンスをする浦小雪の姿があった。対して後半戦のサンデメでは、みやはらとヒロトが後ろにいることで、力強くも泥臭い、かっこいいバンドマンとして楽曲に込めた思いを届けている彼女の姿があった。私は今回のイベントを通して、浦小雪というアーティストの表現力の高さを改めて実感したし、サンデメというバンドがどのように進化していくのか、楽しみで仕方がない。(岩田知大)