日本には伝わっていないかもしれないが、アメリカでは老舗文学誌『ニューヨーカー』の最新号にレナード・コーエンの記事が掲載され、そこで現在82歳の彼が「もう死ぬ準備はできている」と語ったことが、この数日大ニュースになっていた。
http://www.newyorker.com/magazine/2016/10/17/leonard-cohen-makes-it-darker
この記事は、新作『ユー・ウォント・イット・ダーカー』の発売を前に、コーエンのキャリアを振り返り、新作についても語った、ものすごく読み応えのある内容だ。「もう死ぬ準備はできている」という発言の他にもハイライトはいくつもあって、ひとつ際立っているのは、ボブ・ディランがコーエンの音楽がいかに素晴らしいのか、その理由をものすごく細かく音楽的に分析して語っていることだ。
さらにかつてディランと交わされた会話も掲載されている。ある時コーエンがディランにミュージシャンとして「君が1位で、僕は2位だ」と言ったそうなのだが、ディランが「違うよ、君が1位だ。僕は0位だ」と言ったというのだ。数字を超えた存在として、0位のほうが上に思えるが、とこの記事の記者は書き添えているが、どちらにしてもお互いがいかに尊敬し合っているのかが明らかに伝わってくる。
ちなみに、ディランがノーベル文学賞を受賞した直後に、ローリング・ストーン誌がアップした音声のひとつは、ディランがコーエンの“ハレルヤ”をカバーしたものだった。
Hear Bob Dylan cover Leonard Cohen's "Hallelujah" at a Montreal gig in 1988 https://t.co/IC8NtrE3aO pic.twitter.com/SscHXVo93N
— Rolling Stone (@RollingStone) 2016年10月13日
『ニューヨーカー』の記事が話題となっている最中、10月13日にLAのカナダ大使邸にて、コーエンの最新作『ユー・ウォント・イット・ダーカー』のリスニング・イベントが行われ、その後で超貴重! 本人も登場しての短い記者会見が行われた!
そこでコーエンはさっそく話題となっている「もう死ぬ準備はできている」と発言したことについて触れた。「あれは調子に乗って、ちょっと大げさに言いすぎた」と語り会場を笑わせた。コーエンのリスニングに参加するのはこれが2回目なのだが、拝みたくなるような神々しさがありながら、いつもものすごいユーモアがあって、どんなシリアスな会話になっても、必ず笑いで締めくくってくれるのが素晴らしい。そのユーモアは彼の作品の隅々からも聴こえてくるはずだ。この日は「死ぬつもりなんてないよ。永遠にここにいるつもりだ」、「120歳まで生きるよ(笑)」と語っていた。
さらに、話題といえば、アメリカでは昨日ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したので、当然のことながら大騒ぎの祝福ムードだ。コーエンも当然ディランの受賞についてコメントを求められた。「それは、エレベレストの頂上にメダルを飾るようなもの」と短く答えた。つまり、ディランはすでに世界一で巨大な存在なので、その頂上に小さなメダルを飾ったところであまり意味がない、ということ。
また、コーエンが82歳でいまだになぜこれほど意味のある力強い作品が作り続けられるのか?という質問が出た時に、「それは僕よりもボブ・ディランに訊いたほうがいい」と再びディランへの敬意を表していた。
これまで様々な場所でリスニング・セッションが行われてきたが、こんな素敵な設定も珍しいというような特別なイベントだった。今回はプロデューサーを務めた息子さんの話なども聴けた。
詳しいレポートはまた書くが、アルバム全体はすでに公開されている1曲目“ユー・ウォント・イット・ダーカー”にも象徴されているのだが、あまりに感動的で力強い言葉とメロディの数々に溢れる心打たれる瞬間の連続だった。
“ユー・ウォント・イット・ダーカー”はこちら。
10月26日発売の新作『ユー・ウォント・イット・ダーカー』の情報はこちら。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/LeonardCohen/discography/SICP-5076
本人の写真なども撮られていて後から送られてくるはずなので、後でアップします!